今日は私たちのメイン商品プリンセスカットについてご案内いたします。先ずプリンセスカットは現在市場にあるプリンセスカットと自称しているカットとは違い正規のプリンセスカットです。プリンセスカットはその定義が2018年にデビアスによってきめられました。それ迄は様々な自称プリンセスカットが市場に出てしまい、お客様も混乱していたのです。その為プリンセスカットには正規品と亜型の品物では多くの相違点が有ります。
①鑑定書にプリンセスカットと明記されている
正規品のプリンセスカットはカット名称に”プリンセス”と記載されています。非正規の自称プリンセスカットはカット名称の所にプリンセスカットとは記載されません。これが正規品プリンセスカットなのか?それとも非正規品なのか?の一番大きな違いです。因みに自称プリンセスカットの多くは”モディファイテッド スクエアー ブリリアント”(Square Modified Brilliant)と下のGIA鑑定書の様に記載されます。多くの場合プリンセスカットは俗称として使用されているのです。鑑定鑑別機関では当然ですが非正規品のプリンセスカットをプリンセスカットとは記載しません。プリンセスカットは店頭のスタッフが自称しているにすぎない状況なのです。
②ダイヤモンド原石を効率よく研磨できる?
また一部の非正規プリンセスカットの説明でダイヤモンド原石を より効率よく残せるのでラウンドブリリアントのトリプルエクセレントに比べて安価であると説明されて居たりしますが、これは完全な間違いです。ラウンドブリリアントでも輝き重視のトリプルエクセレントと重さ重視のフェアやプアと比べると原石からの目減り率にが大きな違いが出来てしまいます。それはプリンセスカットでも同じなのです。トリプルエクセレントでは原石からの目減り率は50%以上でラウンドブリリアントとほとんど同じです。
目減り率を考えない非正規プリンセスカットでは原石から20%しか失わずに四角いカットに仕上げる事も可能です。しかし、それでは輝かないのです。またカットグレードは当然ですが低い評価となります。
プリンセスカットは美しさを重視
ダイヤモンドの輝きを考えるうえで重要な横から見た場合のダイヤモンドの研磨角度は正面から見て「四角」も「丸」もほとんど同じ角度となるのでカットの良いプリンセスカットはどうしても原石からのロスト率は高くなってしまいます。これは0.35ctのトリプルエクセレントのプリンセスカットを 輝きを無視してカラット重視で研磨すれば0.5ct以上のカットの良くないプリンセスカットを仕上げる事が出来る原石だたと言う意味なのです。このケースどちらも0.8ctの原石を使っていますので、0.35ct(3EX)と0.5ct(F・P)のプリンセスカットは同じ価格となるという意味です。
輝きを重視して研磨されるダイヤモンドはどうしても原石から多くの目減りを伴う仕上がりとなるのです。
③プリンセスカットは割れやすい?
1971年にプリンセスカットの開発者イスラエル・イツコウイッツ氏が考案したクァドリリオンカットは、その美しさはプリンセスと形容され元々のクァドリリオンと言うネーミングよりもプリンセスの名前で紹介される事が多くなっていきます。その美しさは他のファンシーシェイプの及ぶところではありませんでした。クァドリリオンは四角形状なのにもかかわらずブリリアントカットを採用した最初のハイブリットカットのだったからなのです。この発明は多くのダイヤモンドクリエイターに衝撃を与えました。また同時に多くのダイヤモンド研磨者がこのカットを真似しました。その結果クァドリリオンを少し変化させた亜型のダイヤモンドが多く出来上がったのです。そしてそれらの多くはプリンセスカットを自称して市場で販売されることに成ります。これが現在、非正規のプリンセスカットが市場に出回っている理由です。そして、その多くの研磨者達はダイヤモンドの設計者ではありませんので耐久性などを計算してダイヤモンドを仕上げている訳では在りませんでした。そのため非正規のプリンセスカットの多くは耐久性などの基礎設計のルールを無視した四角いダイヤモンドなのです。
プリンセスカットは四角いフォルムです。4隅は尖がらせています、地上で最も高い硬度を持つダイヤモンドも衝撃に対する耐性は水晶と同等程度です。この尖った部分は衝撃に脆く強く打つと欠けてしまうトラブルが頻発します。当り前ですが非正規のプリンセスカットはダイヤモンドを勉強した設計者が設計しているわけではありませんでしたので ある意味当り前ですよね!?もちろんイスラエル・イツコウイッツ氏の作り出したクァドリリオンはその使用用途やセッティング方法などが厳格に決められています。しかし非正規に関してはそう言ったケアをされずに唯々販売されたのです。
2018年にデビアスが設定したダイヤモンドの設計図ではプリンセスカットをソリテール(Solitaire STONE)として使用する前提で設計されました。その為非正規のプリンセスカットの持っていた弱点は改善され、”4隅は丸く仕上げる決まり”となったのです。これによってプリンセスカットの耐久性は飛躍的に向上しました。今までの非正規のプリンセスカットではこの場所をセッティングのアトリエで独自に研磨して丸く仕上げるす事も多かったのです。またセッティングは一つの爪の様に見えても”ふくろ爪”を採用し角の部分が干渉しないような工夫が施されています。
④正規品は正方形に研磨されています
四角いダイヤモンドなので元々正方形であろうと多くの方がお考えなのではないかと思うのですが、ダイヤモンドは2020年現在も超硬素材である事は昔と変わりません、その為、プリンセスカットにおける最も難しい加工は輪郭の設定です。正方形はダイヤモンドの原石の形が良ければ容易く形が取れそうなものだと思われますが、ダイヤモンドは天然の宝石です。原石の形も完全な8面体は元々とても稀なのです。その為、非正規の自称プリンセスカットの場合多くは正方形ではありません、縦と横の比率は良くても1:1.05と5%程度の差異が有るはずです。その為、天地に爪を取って菱形にセッティングすると形の歪さがすぐわかってしまう為多くの場合、横留めにデザインされている筈です。しかし、正規のプリンセスカットでは縦横の比率は1:1.01と1%以内を決められています。その為正方形のダイヤモンドとして様々なデザインを作り出す事が出来るのです。
いかがでしたか?今からプリンセスカットをお探しになる場合は是非正規のプリンセスカットもご検討ください。現在の所正規のプリンセスカットを研磨できるダイヤモンド研磨師は世界でベルギーアントワープの”フィリッペンス・ベルト氏”ただ一人です。現在ベルト氏はインドスーラトやアントワープ等で一般の作業者のなかで上位技術者が少しずつトリプルエクセレントのプリンセスカットを研磨できるように技術指導を行っております。
アントワープブリリアントのプリンセスカット