古代の海底に含まれるホウ素「スーパーディープダイヤモンド」の色原因
国際的な科学専門誌『Nature(ネイチャー)』の2018年8月に発表された新しい研究によると、ブルーダイヤモンドの色原因となる【ホウ素】を含んだタイプⅡbのダイヤモンドについて、超深度起源CLIPPERダイヤモンドである事が判明したと発表しました。
今回の論文の著者でもあるエヴァン・スミス(Evan Smith)博士たちの研究チームがホウ素を含むタイプⅡBのダイヤモンドについて「超深層(超深度起因)」ダイヤモンドであり、他のほとんどの宝石ダイヤモンドよりもはるかに深い地球の深部で結晶化したと明らかにしました。驚くべきことに、これらの青いダイヤモンドに含まれるホウ素原子は、もともと古代の海に由来している可能性があると言うのです。
地球深部のホウ素
ホウ素は、地球の表面に強く集中している元素です。しかし、ダイヤモンドが成長する地球深部のマントルでは、ホウ素の濃度は非常に低くなっています。その為タイプIIbダイヤモンドのホウ素含有量は通常非常に稀で天然自然界の摂理の中では完全な予想外な事なのです。どうして地球深部で結晶しているダイヤモンドに深部では確認されにくいホウ素が含有しているのか?は非常に説明が困難です。
その為ブルーダイヤモンドは何十年にもわたって宝石学・地層学の科学者を魅了してきました。しかもブルーダイヤモンドは出現確率が極端に低く宝石としての価値が高くまたタイプⅡのダイヤモンドにはほかの内包物が極端に少ない特徴がある事から研究対象とするにはダイヤモンド自体が高額過ぎる問題が常に付きまとっていたのです。
このスミス博士の研究前、タイプIIbのダイヤモンド内部に鉱物の内包物が含まれていることは確認されていませんでした。しかし、約2年間にわたってデビアスから提出されたタイプⅡのダイヤモンド原石サンプルの体系的なスクリーニングにより、含有物を含む46のタイプIIbダイヤモンドを見つけて調べることが可能になりました。地球深部で結晶化するダイヤモンドに閉じ込められた何らかの材料の小片である内包物を研究することにより、スミス博士たちは、ダイヤモンドの内包物が成長した母岩とその深さを推測することに成功しました。
これらの内包物を調べる事で特定された鉱物は、地球の非常に深い非常に高い圧力でのみ存在する物質で、タイプIIbダイヤモンドが少なくとも遷移層(410〜660 km)と同じ深さで形成されており、その結晶深度はメソスフェアにも到達している結論に至りました。
現在の宝石学では約150〜200kmの深さの古くて厚い大陸の岩盤の直下のマグマ内でダイヤモンドが形成されているとされていましたが、Ⅱb型のブルーダイヤモンドは通常の約4倍深い地球深部で結晶しているスーパーディープダイヤモンド(超深度起源クリッパー)という事が判ったのです。
ブルーダイヤモンド内の内包物であるホウ素以外の含有物が超深度起源スーパーディープで有る事を証明すると、この深い深さまで、ホウ素はマグマのうねりのような”海洋リソスフェア”が沈み込みプロセスによってメソスフェアまで運ばれて居る事も同時に判ってきました。これは海洋地殻の存在下でダイヤモンドが成長したことを示しています。
沈み込んだ海洋リソスフェアとの関係は、タイプIIbダイヤモンドの青色の原因であるホウ素が地表から運び出された可能性があることを示唆しています。この新しい研究は、タイプIIbダイヤモンドがこれまでに発見された中で最も深い結晶深度を持つダイヤモンドであるという事だけでなく、海洋リソスフェアは沈み込みの過程でホウ素や水さえも海からマントルの奥深くまで運ぶ可能性があることを解明しました。
マントルの地球化学とプレートテクトニクスのプロセスを理解するための非常に重要な検査結果であり、地球のダイナミックな変動を感じずにはいられない内容の発見なのです。
ネイチャー紙の公式サイト:https://www.nature.com/articles/s41586-018-0334-5
広がる超深度起源ダイヤモンドの可能性
2016年のスーパーディープCLIPPERダイヤモンドの発見では超深度起源ダイヤモンドは常に小さく、宝石品質ではないと広く考えられていました。しかし今回の青いホウ素含有タイプⅡbダイヤモンドが超深部起源であるという発見によって覆されてました。
この後、カリナン等のタイプⅡb巨石ダイヤモンドも全てCLIPPERダイヤモンドである事が判明していくのです。