BRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーです。今日は最近何かと話題のCVDやHPHTを含む合成ダイヤモンド、「ラボ・グロウン・ダイヤモンド(LAB-GROWN DIAMOND)」について書いています。
ラボグロウンダイヤモンドはCVD合成ダイヤモンドの事を指す業界用語です。この新素材を一般に紹介する際にどんな名前で紹介されたらいいのか?を業界内で協議して決めた名前がラボグロウンです。ラボはlaboratory研究所の意味なので、研究所で育った(作られた)結晶の意味でラボグロウンと呼ばれています。合成ダイヤではイメージがあまりよくないからという事なんですが、カタカナに弱い日本の人が正しく判断いただけないと私も困るのでちょっと詳し目に説明します。
銀座のお店にも最近「ラボグロウン」在りますか?とご来店されるお客様がチラホラおられます。ご要望をお伺いすると「ちょっと見てみたくて」とか「興味があって」とかなり前向きな動機でラボグロウンを見ていらっしゃるようです。合成ですよ?とお話しすると、「拘らないので」という回答が一番多いように感じます。価格以外の”何にこだわらないのか”が気になってしまい、BRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーに展示してあるダイヤモンドもちょっと見ていただくと、価格が一般のそれよりは抑えめであることも有って、「あれ?これならこれの方が良いかも?」となる方も半数ほどおられました。実際にお作りもいただきましたが、多くの場合はやはり経済的な理由でラボグロウンを選ぶという事の様です。
では美しさはどうでしょうか?ダイヤモンドの美しさは原石の良し悪しと研磨者の腕前で決まります。ラボグロウンは一定に整った原石形をしていますが、その結晶は等軸ではなく層状に積みあがってできています。ソーヤブル原石と比べた場合は結晶系の成り立ちが違いますので原石品質としても天然のソーヤブルと比べると落ちると言えます。各付けするならメイカブル原石と言った所でしょうか?
また研磨者は合成ラボグロウンの場合、もともと目指す形に作業が容易い様に生成されていますので研磨コストはそれ程かかりません、またコスト重視で作られる為、名うての研磨者を指名したりする事も在りませんので機械研磨やレイバーチャージの安い第三国での生産となります。決められた通りに仕上がってきますのでシンメトリー対称は出やすいのですがポリッシュはそれ程美しくありません。
という事で合成(ラボグロウン)ダイヤモンドは美しさという点でBRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーで取り扱うダイヤモンドに遠く及ばないのです。
ラボグロウンは再販時、価値はゼロです。
通常宝石の価値は需要と供給で決定される為、ラボグロウンのダイヤモンドには希少性が無く生産にかかるコスト以外の価値が無いために。再販する場合にも価値はありません。
販売に際しデビアスグループが定めた上代で取引される為、販売価格の制限があります。(※概ね天然宝石の半額程度のようです、詳しくはラボグロウン販売店へお問い合わせください。)
合成ダイヤモンドはCVDの他にHPHT法など様々な合成法が現在までに発見されていてCVD合成したダイヤモンドをHPHT処理する物など複雑なハイブリット合成法が見つかっていますが、その度に看破の方法も確立されており、現在の宝石鑑定鑑別の最新技術で調べると合成か天然かは簡単に見分ける事が出来ます。前述の通りに合成ダイヤモンドは層状の結晶系なのですが、それを高温高圧下で結晶矯正して等軸の見せるような手の込んだ事をする業者も有ります。が、あまり加工し過ぎるとそのコスト分が価格に転嫁される為に合成(ラボグロウン)ダイヤモンドであるメリットも失ってしまうので業者としても難しい所の様です。
そもそもBRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーではダイヤモンドに幸せな記憶や思い出、そして二人の絆の象徴として、熱い決意を込めて贈って欲しいと思っています。そうして贈られたダイヤモンドは二人にとって掛け替えのない想い出の品物となり、時にそれを次の世代へと受け継いで行ける、そんな宝物となるような宝石を商いしています。宝石として価値の無い合成(ラボグロウン)ダイヤモンドは、私たちのポリシーからは遠く離れたところにある商材なのです。
天然ダイヤモンドの持つ不完全だがどこか愛らしい魅力をこれからも多くのお客様にお伝えできればと思います。
追記:ダイヤモンドは熱伝導の極めて高い特殊な超硬素材です。その特性は半導体内部や各種媒体利用できる他、地下資源採掘、また宇宙開発等、今後も人類未達の領域への挑戦に欠かせない素材であることは言うまでもありません、なぜ地球に水があるのか?なぜ重力があるのか?なぜ太陽の周りを定期周回しているのか?私たちには判らないことだらけです。地球誕生の秘密を含めダイヤモンドの特性を生かし切り使い切る事が出来れば、、、人類は更なる高みへ行けるはずです。「ダイヤモンドを制する者は世界を制す」格言は生き続けているのです。
以下2023年2月追記記事
ラボ・グロウン・ダイヤモンドは宝石ではなく工業製品
2023年1月のラパポートレポートの記事でもラボ・グロウン・ダイヤモンドを天然石と誤解して購入する事への警鐘を鳴らす記事が出ています。特に天然ダイヤモンドと異なり宝石ではないラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと根本的に異なり、長期にわたって価値を維持することがで出来ない事を公表していません。実際には人造ダイヤモンドの価格が時間の経過とともに著しく低下することを示す十分な情報とデータが存在するにも拘らずです。
また、ラパポートレポートでは合成ダイヤモンドを正しい情報開示無しにこのまま販売し続ける事は長期的に天然ダイヤモンドの価値の大幅な下落につながる事だとして警告も発しています。
その解決策は、小売業者が積極的に対策を講じ、人工ダイヤモンドの価格が今後数年間で大幅に下落する可能性が高いことを消費者に認識させることである。RJC(Responsible Jewellery Council:責任あるジュエリー協議会)を含むダイヤモンドに関わる全ての業者がこの事を認識する必要があります。
またアメリカのダイヤモンド小売王手「ゼール・Zales」や「ジェームス アレン・James Allen」,「ブリリアントアース・Brilliant Earth」「ダイヤモンド ダイレクト・Diamonds Direct」等天然ダイヤモンドとラボ・グロウン・ダイヤモンドが同一の物であるかのような虚偽の説明をする業者を名指しで批判しており、これは今後消費者との間で何らかのトラブルに発展する事は必定の様です。
上写真のグラフはラパポートレポートWebサイトから引用
多くの専門家の意見は以下の通りです。”天然ダイヤモンドは、自然がダイヤモンドを生み出すのに何十億年もかかるため、供給量に限りがあります。しかし、人工ダイヤモンドの場合、供給量に上限がないため、供給量が増えれば増えるほど、価格はどんどん下がっていきます。ラボグロウンダイヤモンドの価格は驚くべき速さで下落しており、止まる気配も反転する気配もない」。
実際2016年の3Qの約5100から21年の3Qで約1700と比較しても約77%の値下がりを起こしています。
繰り返しますが、合成ダイヤモンドは宝石は在りません。工業製品である以上、生産コストの下落と生産量の増大によって価格は下がり続けるのです。合成ダイヤモンド、ラボグロウンダイヤモンドには天然ダイヤモンドのような価値は無いのです。
上写真はキンバーライト鉱石を運び出すトラックです。天然ダイヤモンドは長い年月をかけて地球が作り出した宝石。それに対してラボ・グロウン・ダイヤモンドは生成方法を人工的に再現して地上で作った工業製品です。ダイヤモンドと同様の化学式で作られていますが、成長線や強度、美しさには大きな差があり、そもそも限りある天然資源であるダイヤモンドと無尽蔵に作り出せる合成ダイヤモンドでは希少性に大きな差が有る事は明白です。
引用:ラパポートレポートのラボグロウンダイヤモンド警鐘記事
https://rapaport.com/news/rapaport-consultation-to-the-rjc-regarding-new-laboratory-grown-material-standards/