仕立て・抑制作業
「生かさぬように殺さぬように」真珠貝のかご詰め作業(仕立て・抑制作業)
あこや貝は「あこや貝」の母貝(ぼがい)を育てる養殖業者と、その母貝を使って真珠を作る真珠養殖業者とがあります。母貝を育てる養殖業者はあこや貝の稚貝を3年間かけて大人にしていきます。手のひら位のイサイズ(約7センチ)程度まで丁寧に育てていきます。あこや貝は貝殻部分が柔らかくデリケートで育成の難しい貝です。養殖業者は丁寧に稚貝を養成していきます。あこやの稚貝は1年で約4.5センチ、2年で約5.5センチ、3年で約7.5センチに成長し大人の貝になります。そうして元気に成長して大人となったあこや貝は真珠貝と成るべく出荷され真珠養殖業者に納入されます。
基本的に「母貝(ぼがい)養殖業者」は強くて丈夫な真珠貝を作るために努力し、「真珠養殖業者」は美しい上質な真珠を作るために努力します。貝を育てるのが分業なのは採掘・研磨で異なるダイヤモンド業界にも通じる考え方です。分業にする事で個々の作業にスペシャリティが生まれより良い仕上がりとなるのです。
その為、真珠養殖業者は納品された元気なあこや貝を抑制籠(よくせいかご)とよばれる籠の中に出来るだけたくさん詰め込み、海へと戻します。詰め込まれたアコヤ貝はわざと通水性の悪い籠の中に置かれて栄養不足と酸欠になり体力を奪われてだんだんと冬眠(仮死)状態になっていきます。この後行う核入れでは、あこや貝が冬眠状態(仮死状態)である事が重要なのです。真珠養殖業者がこの抑制の表現を「生かさぬように、殺さぬように」というのですが、そのさじ加減はこれまでに養われた養殖業者の勘と経験で行います。この抑制作業を仕立てや抑制と呼びます。