サファイヤ(Sapphire)
Sapphire サファイヤ(サファイア)
サファイアは比較的硬く、モース硬度は9と高く、更に優れた靭性を持つ事ち衝撃で割れる性質を示す「劈開」がありません。このため毎日使用する指輪やその他のジュエリーにセットするのも最適な宝石です、普段使いではダイヤモンドよりも丈夫です。
一般的にサファイアは色または透明度(クラリティ)を向上させるために加熱処理されています。サファイアにおける加熱処理は一般的で、一度改変した色が褪めてしまったり退色したりすることは無く加熱処理の結果は永久的です。これはサファイアなどの宝石類が結晶していると考えられる地底60キロ付近でマグマによって長い時間をかけて熱せられば美しい色を発生していたはずが、マグマの熱が僅かに届かずサファイアの色原因である鉄とチタンが未酸化のままの原石に対して人為的に行われる処理である事から、サファイアの元々持っている美しさを引き出す処理としてサファイアやルビー等のコランダム類に限って天然の範疇に認められた外観の改善処理の1つです。
その為、加熱処理はサファイアの取引では問題視されません。しかし、人為的な色の改変を目的に行われる格子拡散処理、、フラクチャーの充填、染色などの天然の範疇と認められていない改変処理については注意が必要です。これらの処理は天然石としての評価を受けれなくなる(処理石となる)だけでなく、場合によっては、退色したり色が抜けてしまう事も有ります。
これは格子拡散が原因で生じる浅い着色は石内部には浸透せず表面だけの拡散処理である事で、打撃による欠けや、研磨などの加工による色抜けの原因となります。また再度カッティングが必要となったりした場合、色が完全にとれてしまう可能性があります。フラクチャー充填および染色したサファイアは、レモン汁のような弱い酸でも損傷することがあります。日本の宝石鑑定鑑別ではそうした処理を施した宝石を天然とは認めない為に信用有る宝石商の店頭でそのようなサファイアに出会う事は在りませんが、旅行など海外でサファイアを購入する場合はその見極めは極めて重要です。
そういう私も駆け出しの頃、タイと宝石集散地【チャンタブリ】へルビーとサファイアの買い付けに行った際には、プロの買い付けに入る取引所内で有るにもかかわらず多くの処理宝石が出回って居る事に驚きました。見抜く目を持たずに原産地で宝石を買い付けるのは無謀なのでお勧めしません。
サファイアの価値ある産地カシミール
歴史的にも価値のあるサファイアはミャンマー、スリランカ、カシミール地方で産出しています。中でも最も価値の高い色として宝石コレクター垂涎の的となっているのがカシミール地方産出のコーンフラワーブルー・サファイアです。カシミールでは、1881年頃にヒマラヤ山脈の高地で、滑らかな「コーンフラワー」ブルーの結晶を含む大きなポケット型鉱床が土砂崩れで発見されました。鉱床とは地殻中に有用元素・鉱物やエネルギー資源物質がかなりの濃度で濃集している場所の事なのですが、ヒマラヤは元々一つの島でそれが大陸に衝突して行き場の無くなった大地が隆起して出来た山脈であると考えられているためにこうしたポケット鉱床が今後も発見される可能性が有り宝石採掘業者の中では常に注目されている地域なのです。
1881年の土砂崩れでは偶然にもサファイアを含む優良な鉱床が露出し、上質なコーンフラワーブルーのサファイアが発見されました。これをきっかけにヒマラヤ南部でも採掘を開始すると見事なサファイアが産出し始めます。そして世界で高く評価されるとカシミールのマハラジャ”ジャンムー・カシュミール藩王”とその軍隊はこの新しい産出地を掌握し実効支配、資金源にしました。
1882年から1887年にかけてはカシミール地方のサファイア採掘は最盛期を迎え、大粒の美しい結晶が数千個も回収されたと言われます。こうしてシルキーなベルベットブルーに発色するカシミールのサファイアが世界で最も高い評価を受けるようになったのです。しかし、私たち日本人はカシミール地方の事が良く認識できません、それは現在の社会科の教科書にはパキスタンから中国へ割譲された地域を除き、インド・パキスタン。中国の主張するすべての地域を所属未定としていて、軍事境界線である実効支配線・管理ラインのみを描く手法がとられているからなのです。カシミールの帰属をめぐっては、インド・パキスタン・中国の三国、特にインドとパキスタンの対立が絶えません、2019年にはカシミール地方で中国とインド軍が交戦状態となり死者まで出しています。さらに、そうした無政府状態の空白中立地域にはイスラム系過激派がアジトを作っていたりと情勢不安が絶えない地域であるために宝石採掘が安定的に行える情勢に無いのです。
強国に挟まれた山岳地帯カシミールは1800年代から1950年頃迄はジャンムー・カシュミール藩王国の支配地域でした。カシュミール藩王ハリ・シングは自身がヒンドゥー教徒でしたが当時カシミール住民の80%はイスラム教徒という微妙な状態でした。これは中世にカシミール・スルターン朝が支配し、その時に住民の多くがムスリムに改宗したことが原因でした。パキスタンとインド対立の背景には、イスラム教(パキスタン)とヒンドゥー教(インド)の対立があり、インド実効支配地域でのイスラム教系組織による分離独立運動も関係しているのです。
ロイヤルブルーの産地ミャンマー
ルビーの産地としても有名なミャンマーのモゴック地域は、同時にサファイアの産地としても有名な場所です。サファイアは、一般的にルビー鉱床に沿って産出しますが、ミャンマーのモゴック地域に限ってはルビーに比べるとずっと少量しか産出しません。多くの人が今も「ビルマ」産と呼ぶサファイアは豊かで強烈な青の色合ち【ロイヤルブルー】と言われます。ロイヤルブルーは特に価値が高くなっています。 また、ミャンマーはジェダイトジェード、スピネル、ジルコン、アメシスト、ペリドットや他の上質な宝石素材の有名な原産地です。
赤色以外のコランダムをすべてサファイヤと呼ぶ。ピンキッシュオレンジのスリランカ産をパパラチアと呼ぶ。アステリズム効果のあるサファイアはスターサファイヤと呼ぶ。モース硬度9 9月の誕生石。