コ・イ・ヌール(Koh-i-noor)
ペルシャ王シャー・ナディールを驚嘆させた王者の輝き
コ・イ・ヌール(Koh-i-noor)はインド産のダイヤモンドで現地の言葉で”光の山”を意味する。1200年代~1300年代には所有者が文献内に登場する事から世界最古のダイヤモンドとも呼ばれる。タージ・マハルを建立したシャー・ジャハーン帝等インドで時の権力者の手には常にコイヌールがあたとされています。1850年に海洋進出を進めるイギリス海軍による東インド会社を使った謀略でインドからイギリスへ持ち出されビクトリア女王に献上されます。1851年ロンドンの第1回万国博覧会に出展されましたが、当時のコイヌールは古代インド式のカット(ムガルカット)が施されており、人々の思い描くダイヤモンドの輝きとは無縁の形状をしていたため”光の山”と呼ばれる世界最大のダイヤモンドを見るために集まった人々を落胆させたという逸話は有名。
その後イギリス女王ヴィクトリアの所有物だったコ・イ・ヌールを輝かせるために夫のサクス=コバーグ=ゴータ公子アルバートはコ・イ・ヌールのダイヤモンドの再研磨をオランダ・アムステルダムの”ロイヤル・コスター・ダイヤモンド(Royal Coster Diamonds)”へ依頼します。当時政界最高の研磨技術を持つとされたコスターダイヤモンドのマスターカッター2人が選抜されます。コ・イ・ヌールの再研磨に抜擢されたのは当時コスターダイヤモンドの中でも実力伯仲していたフェダー(J. A. Fedder)とボーザンガー(L. B. Voorzanger)でした。二人は約一か月半でコイヌールを輝きを放つブリリアントカットへとリカットし186カラットから現在の105カラットと言うサイズとなった逸話は有名です。
大きなカラットを失うことに成ったリカットですが、これには原石の持つ大きな欠陥が起因していたと説明されています。しかし当時公子アルバートは不満を持っておりボーザンガーらが失敗したのではないか?と疑っていました。しかし、その後の研究で当時に技術では最適な方法で再研磨されたことが多くの専門家の証言と検証によって証明されたのです。現在の技術でリカットした場合にどうだったのか?は興味が尽きませんが、コイヌールはこうして新たに輝きを手に入れたのです。
コイヌールは現在までに53の王室の持ち物となっており、まさに王者のダイヤモンドなのです。