エンハンスメント(Enhancement)
宝石の美しさを改善する
エンハンスメント(改良)とは、宝石の持つ本来の美しさを引き出すために行われる人工的な処理で宝石種毎に天然の範疇が設定されています。エンハンスメントは人為的な処理で宝石が本来持つ美しさを引き出すという考え方で行われます。これに対してトリートメント(改変)は天然の範疇を超える処理と言う意味で使われます。
エンハンスメントの代表的な処理方法としてはルビーやサファイアの【加熱処理】やエメラルドの【含浸処理】が挙げられます。これらの処理はその宝石でのみ天然の範疇と認められているもので、サファイアやルビーに含侵処理するとエンハンスメントでは無くトリートメント扱いとなって天然の範疇ではなくなってしまいます。逆も然りでエメラルドを加熱処理する事も天然石の範疇では禁止されています。※エメラルドは加熱処理すると割れてしまうはずです。
宝石種毎にエンハンスメントの範疇が設定されていますがダイヤモンドにはいかなるエンハンスメントも存在しません。ダイヤモンドは研摩以外の人為的な処置を施すとすべて天然宝石の範疇を超えて処理石となってしまいます。
加熱と含侵
ルビーやサファイアの加熱処理では約2000度もの高温で熱する事で宝石内部の黒ずみや青みを取り除き、宝石本来の美しい色を引き出すことが出来ます。これは発色原因になっている成分を酸化させて色を発生させるメカニズムです。もともとマグマの熱で長い時間をかけて引き出されるものを人為的に地上で熱すると言う考え方です。
現在では研磨済みのサファイヤやルビーの約95%にこの加熱処理が施されていると言われています。エメラルド行われているオイルによる含浸処理は透明樹脂をエメラルドのクラック部分に含侵して強度を持たせる処理です。この時、透明な樹脂はエンハンスメントの範疇ですが緑色の染料入りの樹脂を含侵するとトリートメント扱いとなり天然石の範疇を外れます。その他、真珠を染色するなどの処理もエンハンスメントです。真珠の場合染色処理しないものをナチュラルと呼びます。
カラーストーンの鑑定鑑別ではドイツのギュベリン研究所など先進的な鑑別を行う機関が国際的にも評価をされています。