オリジン(Origin)
鉱山企業の協力を得て産地オリジンを確立させてきた
ダイヤモンドは何処で採掘されて、誰の手を経て、誰に加工されて、誰に輸入されたのか?が判り難い品物です。しかもダイヤモンドは古くなるという概念が余り通用しない品物です。その為に、素性が綺麗で新品の新しいダイヤモンドを買いたい(贈りたい)と考えた場合に”産地オリジン”は非常に重要です。
また、2003年に勃発した世界同時多発テロの問題で反政府組織に支配されたダイヤモンド鉱山産出のダイヤモンド原石を販売する事が反政府組織の資金源になるという問題が世界で問題視されました。
これに対してダイヤモンド業界では独自にキンバリープロセスを制定し紛争地域から輸入された可能性のあるダイヤモンド原石の不買運動を行ったのです。これは2003年当時ダイヤモンド原石について産地や流通ルートを開示して販売する事が非常に難しいという現実があるためでした。
ダイヤモンドのリーディングカンパニー”デビアス”では、いち早くこの事に取り組んでおり操業する南アフリカ、ボツワナ、ナミビア、カナダの各鉱山産出のダイヤモンドについての情報開示を積極的に行っております。しかし、現在の所明確に産地を明示するには至っていません。またロシアやその他の産地のダイヤモンドについても鉱山企業独自の販売ルートで販売されたダイヤモンド原石については産地を追跡する事は可能なようです。しかしそれはあくまでもダイヤモンド加工業者の倫理感に頼りながらの事なのです。
どうしてダイヤモンドは産地確定できない?
上写真のダイヤモンドはアメリカのダイヤモンド鑑定機関GIA発行のレポートによって産地がボツワナなナミビアかカナダか南アフリカです。と、かなりアバウトな産地オリジン証明のダイヤモンドです。デビアスグループの鉱山のある場所全てが記載されていますので、【デビアスのダイヤモンド原石でした】と言う所までしか証明出来なかったと推測されます。
では、どうしてダイヤモンドの産地証明は出来ないのでしょうか?
それはもともとダイヤモンドの産地と加工地は離れた場所に有ったためだと考えられています。原産地では原石の持ち逃げを避ける為にその価値判断が”研磨し終わるまで出来ない”状況を作る必要がありました。
一番は実際にダイヤモンドを掘っている鉱山の工夫に持ち逃げされる事を避ける為でした。ダイヤモンド原石はよほど大きなカラットでも手の中に握りこめてしまうようなサイズなのです。その為ダイヤモンドの加工は産地から離れた場所に居る一部の特別な職人に委ねる事が通例でした。産地はアフリカやインド、ブラジル等の不毛で人類未踏、一見何もない様な場所なのですが、加工地はベルギーやオランダ、イギリスと言った商業と行政の中心地で行われ、加工後すぐに売買できる環境を整えてきたのです。
特に加工地が都市部に集中している事で産地毎にダイヤモンドを管理する事はせずに(産地による価格の違いがない事が一番の原因でもあります。)研磨済したダイヤモンドの品質毎の管理をしたのです。
研磨済みダイヤモンドの価格はニューヨークのラパポートレポートの発行する世界のダイヤモンドの基準価格を基に行われます。ラパポートレポートではダイヤモンド鉱山の産出状況と研摩済みダイヤモンドの販売状況を鑑みて決定しています。世界中のダイヤモンドディーラーがこの基準価格を基に研磨済みダイヤモンドを取引します。しかし原石ビジネスでは長らくラパポートレポートの様な確実な価格設定が無く研磨済みダイヤモンドのグーレドを推測してダイヤモンドを売買する必要が有ったのです。
そのため、ダイヤモンド原石販売ではグレードを予測して産地をミックスしたり原石を混ぜて取引されています。産地毎に集められた原石は予測されるグレードで仕分けされて販売されたのです。この方法で販売されたダイヤモンド原石を研磨仕上げて販売する場合には、産地が何処であるか?は問題視されなかったのです。
今後産地証明はどうなる?
ダイヤモンドの鉱山企業の内、デビアスでは2030年までに販売するダイヤモンドのトレサビリティを確実にすると発表しました。これはダイヤモンドの産地オリジンを明確に販売すると言う意味です。ダイヤモンドのリーディングカンパニーとして100年以上業界をけん引してきたデビアスグループの今後の動向に注目が必要なのは言うまでもありません。おそらく先駆けては自身の運営するダイヤモンド鑑定機関デビアス鑑定から産地オリジンを搭載すると思われます。