アフリカ産ダイヤモンドのハイカラーを婚約指輪に
アフリカ産ダイヤモンドのDカラー出現確率は2万分の1!
ダイヤモンドの色グレードは原石の価格や研磨済みのダイヤモンドの価格に大きな影響を与えます。それはニューヨークのラパポートレポートによってダイヤモンドのグレード毎の価格が毎週刷新されている事も在りますが、ダイヤモンドマーケットが4Cグレードで価格を決定しているという事が有ります。
ダイヤモンドの4CカラーグレードでF以上の(Hカラー以上)グレードを業界で通称”ハイカラー”と呼びます。基本的に黄色系統のダイヤモンドが多く産出するアフリカではハイカラーのダイヤモンドは過去も現在もとても珍重されています。
↑上写真はDカラーのプリンセスカットダイヤモンド、プリンセスカットは色の乗りが良い為にカラーダイヤモンドでも積極的に採用される形です。その為逆説的にハイカラー、特にDカラーの出現確率は異常に低くなります。少しの色溜まりが色となって厳密なカラーグレードの現場では検出されてしまうからなのです。
GIAが4Cを作った頃アフリカは唯一委のダイヤモンド産地だった
1860年代アフリカでダイヤモンドが見つかるまでダイヤモンドの産地はインドやブラジルの二次鉱床から僅かに産出するだけでした。(紀元前7世紀から1860年代までに世界で見つかったダイヤモンドの総量は10万カラットでした。
それに対して1880年にアフリカで見つかったダイヤモンドはわずか1年間で3000万カラット以上でした。)
唯一の産地でもあったインドやブラジルの二次鉱床はもともとアフリカの一次鉱床から産出したダイヤモンドが大陸移動によってゆっくりと運ばれ、アフリカから切り離され、地盤沈下によって地下へ沈み、地盤の隆起によって地表へ運ばれたダイヤモンドを含む堆積した土の中から探し出します。
またそうしたダイヤモンドを含む土の風化によって雨や風に流され運ばれて川底などに堆積した堆積物の中から産出していました。これらのインドやブラジルのダイヤモンドは元をたどるとアフリカのダイヤモンドです。
その為ほとんどのダイヤモンドは黄色味を帯びており、ダイヤモンドのグレードを1930年代に決定した当時はFカラー以上(Hカラー以上)のハイカラーは兎にも角にも産出が稀でした。
1960年以降はロシアの鉱山が発見され1980年代以降にコンスタントに稼働すると、程なくロシア産ダイヤモンドが市場に登場します。現在は鉱山を管轄するサハ共和国とロシア政府の合弁企業アルロサ(Alrosa)がダイヤモンド原石の販売を行っています。
当初、ロシア等の非民主主義体制の国から産出された地下資源を買い付ける事は結果的に非民主主義体制を助ける事につながるとの懸念からロシア産ダイヤモンドは販売が思うように出来ませんでした。
当時ダイヤモンドのシンジゲート制を世界に敷いていたイギリスのデビアスでは管轄するアフリカの鉱山からハイカラーダイヤモンドが殆ど産出していないことが大きな問題でした。
世界の宝飾需要はハイカラーダイヤモンドだったからです。ハイカラーを販売したいデビアスと販売先が確定できないアルロサ、両者の利益が一致した結果デビアスを通じてロシア産ダイヤモンド原石を販売することに成ったのです。
こうして世界中のダイヤモンドマーケットに原産地を伏せたままロシア産ダイヤモンドは流通を始めたのです。
この問題は現在でも世界的に潜在し続けています。また自然環境保護や採掘後の自然環境復帰の観点では永久凍土をダイナマイト爆破して地下資源を採掘するロシア産ダイヤモンドに対して賛否が有るのは事実です。
そうした現状では私たちブリッジ銀座アントワープブリリアントギャラリーはロシア産ダイヤモンドは取り扱いません。
が、日本の様な開かれたマーケットではロシア産出ダイヤモンドだからと言って問題視するケースは稀です。
ロシア産ダイヤモンドは産出の80%が等軸状8面結晶でソーヤブルという超高品質鉱山です。
(※ボツワナでは等軸状8面結晶のソーヤブルダイヤモンド原石が産出する確率は僅かに6%です。)
しかもロシア産ダイヤモンドは通称”アイスカラー”と呼ばれるHカラー以上(Fカラー以上)のハイカラーの産出が多いのです。
格言「美しいダイヤモンドはアフリカから」
基本的なダイヤモンド原石の品質にそれ程の差がありながら、ダイヤモンドの原石の販売価格ではボツワナ産がロシアの”それ”を上回ります。ボツワナのダイヤモンドはソーヤブルの出現確率もハイカラーの出現確率もロシア産を下回るのに市場関係者の評価である原石の品質(価格)は世界最高なのです。
これは同じDカラー等の4C評価のダイヤモンドでも美しさに違いがあり、違いが有るために原石や研磨済みダイヤモンドの販売価格にも差が生まれる事に繋がっています。同じ4C評価のダイヤモンドでの販売価格の違いは元を辿ると原石品質と産地による原石の質(たち)が原因なのです。
産地や原石品質の違う同じ4C評価の研磨済みダイヤモンドの美しさ(見た目)には差があります。2000年頃に成ると業界では新たにカナダやオーストラリア、ロシア産が加わった事で産地毎のダイヤモンドの特徴が次第にダイヤモンド加工業者を中心に判ってきました。
同じ鉱物であるダイヤモンドの結晶構造の偏りや、研磨にかかる時間の差が有る事、(これは2017年に解明されるダイヤモンドの硬さの違いに繋がっていきます。)等が判明してきます。
サイトホルダーや原石ブローカー、ダイヤモンドカッター・ポリシャー等、ダイヤモンドのプロフェッショナルの間では研磨済みダイヤモンドではアフリカ産のダイヤモンドが美しく仕上がるという事が暗黙の常識の様になっていました。その結果【美しい物はアフリカから】という格言が誕生した程です。
実際にボツワナのメイカブル品質のダイヤモンド原石の仕上がりはロシア産の平均的なソーヤブル・ダイヤモンド原石と同等若しくはそれ以上の美しい仕上がりとなるために、原石段階での販売価格は世界最高なのです。
しかしダイヤモンドの最終価格は4C評価で決定されるという仕組みは変更される事が在りませんでしたので、4C編重の日本のマーケットでは原石の価格は安いが、高い4C評価で磨き上がるロシア産ダイヤモンドはバイヤーにとっても取り扱いやすく沢山販売されることに成ります。
サイトホルダーたちは実際のダイヤモンドの美しさではなく4Cグレードだけで買ってくれる日本人バイヤーはとっても商売しやすい相手だったと言われています。
アメリカのラパポートレポートでも産地によるダイヤモンド品質の差からディスカウント率を決めていますが、その事を説明する必要のないバイヤーには、その事を説明する必要は無いのです。
結果的にロシア産の登場した1980年代以降、美しい仕上がりに成るが高額なアフリカのダイヤモンドは本当の美しさの判る世界の別のマーケットへと販売され日本国内にはあまり入ってきていないのです。
超貴重!ボツワナ産ハイカラーダイヤモンド
アフリカのダイヤモンドが主流だった1990年代までは4CグレードのDカラーの出現確率は2万分の1と言われたほどです。アフリカ各地で産出するダイヤモンドは通称ケープと呼ばれる黄色い結晶が通常です。
ケープは黄色味掛かったダイヤモンド原石を指す業界用語でそうしたダイヤモンドが産出した南アフリカのケープ州から取られたアフリカ産ダイヤモンド原石の俗称です。
ダイヤモンド原石の段階で黄色く見えるこれ等の結晶は研磨済みダイヤモンドにも引き継がれ仕上がった場合でも黄色い仕上がりとなります。4C評価でHカラー以上と成る事は稀で特にDカラーの出現確率はとても稀です。
アフリカ産ダイヤモンドにハイカラーが無いのか?と言えば、希少ですが産出はしています。グリーンヴェールと呼ばれる薄い緑色の膜に覆われた様な生地のダイヤモンド原石が上写真の中にも幾つか散見されると思います。
薄い黄色ではなく薄い黄緑から緑のヴェールに包まれたダイヤモンドです。ボツワナではこのグリーンヴェールのダイヤモンドからHカラー以上のハイカラーが出現します。
このコラム最初のプリンセスカットでは研磨側へのオーダーでD-VVS1をオーダーしていました。Dカラーオーダーですのでグリーンヴェールに包まれた最高品質のダイヤモンド原石を使って挑戦しました。
クラリティ(透明度)グレードはダイヤモンド原石をレーザースキャンして事前にある程度の予測を立てる事が出来ます。
しかしプリンセスカットの場合、原石をレーザースキャンした際の予測カラーでDが出ていたとしても、研磨済みダイヤモンドに仕上がった際に鑑定鑑別機関でDカラーと判断されずに検品落ちとなるダイヤモンドが続出しました。
これはプリンセスカットが色を溜め易い傾向のある形状である事も原因していたと思いますが、色原因が少しでも有れば色として出やすいプリンセスカットの宿命なのかもしれません。
また鑑定鑑別行ったのがデビアスグループで評価が厳しかったことも有るかもしれません。兎に角なかなかDカラー判定を受ける事が出来ませんでした。という事で余談ですがプリンセスカット(トリプルエクセレントに限る)のDカラーは非常に希少なのです。
白い凛とした輝きが特徴のアントワープブリリアントカットのダイヤモンド。この形状は仮に4C評価がF以下のカラー評価になっても実際にダイヤモンドを見ると黄色味を感じにくい白い輝きが特徴。
専属研磨師のフィリッペンス・ベルト氏はダイヤモンドそれぞれの個体が持つ美しさを引き出していきます。そこには自身の目で判断した審美眼と確かな存在美の表現が有るのです。
現在の技術ではカットグレードを無視すればダイヤモンドのパビリオン角度の調整で光のスペクトルで どの色を”より跳ね返させるか?”などを調整する事が出来るようになっています。
実際にこの技術はカラーダイヤモンドでは有効な技術として使われています。このためカラーダイヤモンドではラウンドブリリアントカットをエクセレントに研磨する事は在りません。カラーダイヤモンドで大事なことは希少な色がより発揮されているかどうか?なのです。
オーストラリア産ピンクダイヤモンドではこの事を利用して、より鮮やかに色を発色するダイヤモンドの研磨角度を研究しています。
その為同じオーストラリア産でカラーグレード評価が同じになっても石の美しさには差が出ます。
鉱山を運営するargyleで研磨仕上げされたピンクダイヤモンドの方が美しく仕上がるのです。ダイヤモンドの美しさが原石の良し悪しと研磨者の腕前で決まるもう一つの例ともいえます。
上写真はボツワナ・ジュワネングに集められたダイヤモンド原石。基本的に色の有るダイヤモンド原石からハイカラーに成る可能性の有る原石を選定していきます。しかし何もハイカラーでなければ美しくないと言う訳では在りません。
4Cグレードはダイヤモンドの希少性を現す物であって美しさを表す単位では在りません。本当に美しいダイヤモンドは原石の持つ存在美を引き継ぎ、それをダイヤモンド研磨者によって引き出された逸品だけなのです。
原石の段階で美しさを選び抜かれたダイヤモンド原石を仕上げる時に、希少な色合いと希少では無い色合いを比べた場合はどうしても希少な色合いのダイヤモンドの方が魅力的になります。
中々出現しない”珍しい事”は宝石にとってとっても重要な要素だからです。特に結婚の記念に贈るダイヤモンドは美しい事は前提として、世界に一人しかいない大切な女性へ贈る宝石ですので、圧倒的な希少性が有るに越した事は在りません。
オンリーワンは美しさの1つの要素に成りえるのです。その為、高硬度から特別な美しさを発揮するアフリカ産ダイヤモンドのハイカラーはそれだけで価値が有るのです。
※一部超深度起源ダイヤモンド等は黄色の色原因となる窒素の濃度が決定的に低くなる深度でダイヤモンド原石が結晶しているためにハイカラーに限定されています。アフリカ産のCLIPPERダイヤモンド等の超深度起源ダイヤモンドの出現条件や承認条件は決まっていません。
ハイカラーだけが美しさの基準ではない
ダイヤモンドの美しさは画一的なモノでは在りません、今日までにダイヤモンドの輝きや美しさを数値化しようとしたすべての判定機の判定結果が正しくないとGIA等の考察でも明らかになっています。
4Cカットグレードの決定条件に情緒的な判断が含まれますが、カットグレードも形りの美しさは表現されるものの、美しい輝きかどうか?を判断することは出来ません。ダイヤモンドの美しさは人それぞれに感じるものです。
ですが世界共通の美しさという概念も無い訳では在りません。それは普遍美と呼ばれる黄金比率・白銀比率などの世界中で受け入れられている考え方に基づく考察です。人間が美しいと感じる輝きには少しだけ法則があります。
その法則にそって仕上げられたダイヤモンドには普遍美が宿ります。アントワープブリリアントでは専属研磨師のフィリッペンス・ベルト氏の審美眼で選定した上質ダイヤモンドを普遍美をもって仕上げています。
ダイヤモンドのカラーについても同様の事が言えます。ハイカラーにはハイカラーにしか出せない美しさが、そして色甘には色甘にしか出せない美しさがそれぞれに存在するのです。ダイヤモンドが元々持つ美しさを引き出す。それが私たちアントワープブリリアントギャラリーの考え方なのです。