カッター(Diamond Cutter)
ダイヤモンドを切断する職人ダイヤモンドカッター(Diamond Cutter)
カッターはダイヤモンドの加工を担当する職人のうち、クリービングを行う職人の事、研磨技術やレーザーソーイングの技術が無かった1990年まではダイヤモンドにとって切断は非常に重要な最初の加工でした。その為、ダイヤモンド原石はまずグリーピングして研磨可能な形に加工する必要がありました。ダイヤモンドカッター達はダイヤモンドのグリーピング計画を綿密に練って行っていました。
1800年代などは原石からより効率よく大きな美しいダイヤモンドを取り出すために優秀なグリーパーには多くのダイヤモンドが集まり、優秀なグリーパーは大きな名声を得ていました。
現行の技術でダイヤモンドカッターの役割は、、、
世界的なカッター・クリーバー(カッター)と言えばラザール・キャプラン氏やジョセフ・アッシャー氏が挙げられます・彼らは伝説的なクリービング職人とで歴史的なサイズのダイヤモンドをクリービング(カット)して大きな名声をえました。一方レーザーソーイングの技術が上がった現代では当時ほど大きなサイズのダイヤモンド原石でなくても大きな石をレーザースキャンとシーイングの技術で切り出す事が出来るようになりましたのでキャプラン氏やアッシャー氏たちの駆使したクリーピング技術は必要なくなったのです。
2019年現在でも著名なダイヤモンドポリシャーとして世界最大のダイヤモンドを磨いたガビ・トルコフスキーは1985年にプレミア鉱山で発見された755カラットのダイヤモンドを545カラットに仕上げています。これはレーザースキャニングとレーザーソーイングの技術進歩によってもたらされたもので、原石からの目減り率は28%でしかなく、いかに効率よくダイヤモンド原石を活かす事が出来たかが判ります。同様の技術を使ってDカラーFLクラリティーのダイヤモンドだけを大きく原石から取り出すなどの新しい試みが世界中で行われるようになっています。
興味の尽きない歴史的なダイヤモンドの逸話
逆説的に1905年に同じプレミア鉱山で発見された3,106カラットのダイヤモンド・カリナンは当時スキャニングもレーザーソーイングも出来なかったためクリービング技術で最初に”割る”必要があったのです。結果クリービングを担当したロイヤルアッシャー社によって9つの大きな石と96個の小さな石が切り出されます。最大サイズのダイヤモンドはカリナン1、別名【偉大なアフリカの星 (The Great Star of Africa)】と呼ばれる歴史的なダイヤモンドです。しかし、原石からの目減り率は83%と非常に大きなものでした。
仮にカリナンダイヤモンド原石を現在の技術で仕上げたらどうだったのかは尽きない興味としてダイヤモンド業界で語られています。
1990年代まではダイヤモンドを輝かせるために必須の技術であったカット(クリービング)、クリービングによって輝くダイヤモンドですが輝くためにカラット(重さ)と言う大きな代償を伴ったのです。
実際に1850年当時世界最大の研磨済みダイヤモンドだったコイヌールがイギリスのヴィクトリア女王所有となってパリ万博でお披露目された際、「世界最大のダイヤモンド」を一目見ようと集まった聴衆が目にしたものはローズカットで表面を磨いただけの大きなダイヤモンド原石でした。思ったほど輝かないコイヌールに落胆した民衆の反応を見てヴィクトリア女王はコイヌールにブリリアントカット施して輝かせるように命令します。コイヌールは輝くためにクリービング(割られ)され185カラットから最終的に105カラットで仕上がりました。
この結果にヴィクトリア女王の夫サクス=コバーグ=ゴータ公子アルバートが余りの目減り率(44%ロスト)に激怒したそうです。
現代では大きな歴史的なサイズのダイヤモンド原石や研磨後に高額に成る事が予想されるカラーダイヤモンドの原石などをカットするという職業は2019年現在テクノロジーの進化によって完全に無くなってしまったのです。ダイヤモンドカッターは古の時代の職業となったのです。
※現代において一般的に”ダイヤモンドモンドカッター”はダイヤモンドポリシャー(研磨者)を指す言葉として使用されます。