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マルセル・トルコフスキー(Marcel Tolkowsky)

Marcel Tolkowskyマルセル・トルコフスキ―(1899年12月25日~1991年2月10日) 

ダイヤモンドのカットグレードけっていにおいてトルコフスキー理論は不完全だった

マルセル・トルコフスキーは、ベルギー・アントワープ出身の数学者・ダイヤモンド・デザイナーである。 ベルギーのダイヤモンド加工業トルコフスキー家の一員。
トルコフスキー一家は現代までダイヤモンド研磨界に続く経営者一族で6代目のガビ・トルコフスキーは世界的にも有名なマスターカッターのひとりである。マルセル・トルコフスキーはガビの祖父に当たり、一族では4代目。産業革命期に活躍したマルセル・トルコフスキ―は研磨工場を経営する傍ら1919年に自身の著書「ダイヤモンドデザイン」の中でダイヤモンドの理想的なカット形状アイディアルカットを発表した。当時理想的とされたアイディアルカットは現在のベリーグッド(Very Good)評価となる。マルセル・トルコフスキー氏は経営者であると同時に数学者であり、ダイヤモンド内部に入射した光の進路を計算した偉人として知られる。

天才的な才能を持つ従兄弟キャプラン

同時代に活躍した天才ダイヤモンド・クリーバー”ラザール・キャプラン(Lazare Kaplan)”です。彼と親戚関係(従兄弟)であったマルセルトル・コフスキー氏はラザール・キャプラン氏からのオーダーで様々なダイヤモンドの最適な研磨角度を計算して さまざまなカット形状でダイヤモンドの反射を最大化する方法について数学理論を用いた博士論文を作成しました。マルセル・トルコフスキー氏はあらゆる種類のダイヤモンドに適した公式が存在する事を解明しダイヤモンドを最適にカットすると言う考え方を業界に根付かせた偉人なのです。

そうした理論醸成の背景となっているのはマルセル・トルコフスキー氏を50年ほど遡る1850年代にアメリカのヘンリー・D・モース氏によってリカットされるた”歩留まり”よりも”輝き”を重視したダイヤモンドだと言われています。さらに1880年代にアフリカでダイヤモンドが大量に発見されると重さを多少原石の重さをロストしても輝く仕上にダイヤモンドをカットする事が出来るようになってきたのです。1900年代初頭はどの輝きを最高とするのか?が世界的にも待望されていた時代なのです。マルセル・トルコフスキー氏は世界的なそうした需要にこたえてダイヤモンドデザインを発表したのです。

※1800年代初頭はダイヤモンドの採掘が本格的に行われて居なかったため(地層学が未発達で何処からダイヤモンドが来ているのか?多くは謎に包まれていた)多くの数学者や芸術家にダイヤモンド研磨の依頼が舞い込んでいた時代、専門的にダイヤモンド研磨だけでは仕事量が少なすぎた時代でもある。1860年までに全世界で発見されたダイヤモンドの総量が10万カラットだったのに対して1880年代にアフリカでは1年間に4,000万カラットものダイヤモンドが発見されダイヤモンドラッシュが巻き起こったのです。

しかし、数学理論そのものが未熟だった100年以上前の設計図でダイヤモンドを仕上げても最高の輝きを得ることは出来ませんでした。トルコフスキー理論は不完全であり、改善の余地があったのあです。最高の輝きが達成される1990年まで多くのダイヤモンド研磨者が幻想的な最高の輝きに挑戦しては敗れていきました。

GIAによって最高グレードエクセレントが開発された

ダイヤモンドの最高カット、エクセレントはGIAによって1988年に発表された

マルセル・トルコフスキー氏の発表した通りに研磨したダイヤモンドは当時多く存在しましたがGIAなどのダイヤグレードを決定する機関において最高の評価を受けることは最後まで在りませんでした。1980年ダイヤモンドの国際的な評価規準4Cを定めるGIAでは不完全なトルコフスキー案に代わって独自のエクセレントカット理論の概要を発表します。(※トルコフスキー案のアイディアルは現在のベリーグッド評価となります。)その後、様々な学者や研磨者がこの難題に挑み最高の輝きを追い求めGIAの理論に挑みます。そして1988年GIAによって最高グレード・エクセレントが遂に発表され決定されるまで実に半世紀以上理論醸成を待つ必要があったのです。

一方日本国内では1980年代にAGL基準でダイヤモンドのカットグレードを独自に制定しダイヤモンドを世界に先駆けて4Cで評価します。この時AGL基準の元になったのがトルコフスキー理論でした。その為日本では世界の感覚よりもトルコフスキー理論が市場に浸透しています。80年代は多くの宝石店主がAGLの勉強会でトルコフスキー理論を学びました。しかし同時期にGIAではエクセレントカットの研究が進んでおり、GIAによってカットグレードの基準案が示されると元々不完全だったトルコフスキー案をベースにしたAGL基準は自然消滅したのです。

GIAではトルコフスキー理論を含むエクセレント以前のアンモディファイテッドラウンドブリリアントカットを”トラディショナルカット”と定義してそれぞれの時代背景に配慮して評価します。マルセル・トルコフスキー氏は1991年ダイヤモンドの最高グレードエクセレントが達成されると、それを見届けるようにしてこの世を去ったのです。

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