ダイヤモンドの輝き測定機について
光のパフォーマンスという幻想
ブリッジ銀座アントワープブリリアントギャラリーではダイヤモンドの美しさの内最も重要な項目として【原石の良し悪しと研磨者の腕前】に拘っています。しかしダイヤモンドの美しさは其の拘りだけでは説明できるものではありません。
2020年現在世界には様々なダイヤモンドの測定器が有り、中でも美しさを測定したりグレードするような機械がたくさん出回っています。ブリッジ銀座アントワープブリリアントギャラリーで取り扱っているダイヤモンドをそれらの測定器で測定した場合殆どのケースでは最高グレードとして評価が出ますが、極ごく稀に最高グレードの評価にならない事が有ります。AntwerpBrilliantは世界最高品質のダイヤモンドを取り扱っているにもかかわらず、どうしてそういったことに成るんでしょうか?2020年4月のGIAの考察に参考に成る文章が有ったので、内容を以下に記載します。
https://www.gia.edu/gia-news-research/gia-researchers-evaluate-light-performance-diamond-cut
以下:↓↓内容です。↓↓「光のパフォーマンス」という言葉は、多くのダイヤモンドの取引で使用されています。明るさ、輝き、ファイヤー、シンチレーションなどの用語は、さまざまな宝石鑑別組織および鑑別機材メーカーによって曖昧な基準で明確に説明され定義されています。これらの特性とダイヤモンドのプロポーションの相関関係はかなり広く理解されています。ラウンドブリリアントの「理想的な」カット”エクセレント”は実際にダイヤモンドの見栄えを良くするという具体的な主張もあります。
プロポーションの良し悪しによって生み出されるラウンドブリリアントの外観の主な欠陥は、1世紀にわたって研究され解明されてきました。具体的にはフィッシュアイ、暗い中心部、暗いメインなど、石の端まで伸びるブリリアンスなどの現象は、それぞれ、浅すぎるパビリオン、深すぎるパビリオン、またはクラウンの高さとパビリオンの深さの不一致が原因で有る事が解明されてきました。1900年初頭の理論等75年以上にわたるこの議論は、どのプロポーションが最高の外観を提供するかを「証明する」ことに焦点を当ててきました。
しかし、「光のパフォーマンス」には、プロポーションの良し悪しが影響しているのでしょうか?これ迄のダイヤモンドの外観に関しての議論は、多くの場合、ダイヤモンド内部に入射した光が高い反射率で正面へ返る事が集中して議論されてきました。高い反射率のダイヤモンドは全ての観察者が美しいと感じると想定できます。しかし、研磨されたダイヤモンドの光の性能を評価するためのシステムの開発において、人間が観察して美しいと感じる要素はどの程度役立っているのでしょうか?特に、エンドユーザーは、光のパフォーマンスを評価するためのさまざまな項目で表現される光の種類を視覚的に見分ける事が出来るのでしょうか?
光のパフォーマンスはどのように評価されているのでしょうか?最近数十年で最も広く議論されている光の性能を評価する方法は、いくつかの色の層を備えた、着色されたドームまたは円筒形のビューアを使用して行います。色付きのドームまたは円筒形のビューアーは、ダイヤモンドを表示するデバイスの一部として使用されるか、ダイヤモンドの3D測定(ワイヤーフレーム)を入力して使用するコンピューターモデルで使用されます。このようなアプローチは、色付きのパターン表を上にしてテーブルから垂直に出る光がダイヤモンドに入る角度とどのように関係するかを明らかにする画像を現します。パターンは、ダイヤモンドの比率と対称性の両方が理想的かどうかを判断できます。しかしこの方法ではダイヤモンドのクラウンから出る光の量は測定されません。このように多くの実装では、ファイヤーまたはシンチレーションに特定の評価が採用されるのですが、それは、逆説的にそれ以外の要素が除外された評価となります。各グレードの範囲内で許容されるパターンの違いには、さまざまな基準があります。これらの方法でダイヤモンドを測定する場合に一部の検査機はダイヤモンドを傾けることを含みますが、別の検査機ではフェイスアップ、垂直方向の位置のみで測定します。
そのすべてのバリエーションで、このアプローチは、選択された標準が、ダイヤモンドに望ましい明るさ、ファイヤー、コントラストパターン、および輝きのバランスに関するすべての問題に対処することを前提としています。このアプローチの検査機(測定器)は、結論が視覚的に理解できることを確認するためにいくつかの項目に変換して数値化してダイヤモンドを評価しますが人間の目視による観察結果を査定に含む事は在りません。
別の方法では、イメージング分光光度計を使用して、光源から異なる距離にあるダイヤモンドの5つの画像を取得します。これらの画像は、明るい白色光(ブリリアンス(明るさ)とスパークルして説明)、色のついた光(ファイヤーとして説明)、およびそれらの違いと光の対称性(シンチレーションのシンメトリーして説明)の量について分析されます。このアプローチでは、ダイヤモンドのクラウンから出る光の測定値が得られますが、定量的な結果は示されていません。代わりに、3つの分析された値が、測定する会社が保有する以前に測定された同じ形状の何千ものダイヤモンドのデータベースと比較され、データに対する棒グラフで表示されます。検査機(デバイス)は、光源または検出器のいずれかに対するダイヤモンドの傾斜が無い状態でのみ測定されています。このパターンでも 3つの出力値が人間が見るものと相関していることを確認するために、鑑定士などによる目視の測定は行われていません。
ダイヤモンドの光のパフォーマンスに影響を与える他の要因
上記複数の光のパフォーマンス測定の情報は非常に疑わしいと言わざるを得ません。磨かれたダイヤモンドは、それらの「ほとんど」ではなく、それらに入る光エネルギーの半分未満を返します。明るさは輝きとは異なります。鏡と白い紙の両方が多くの光を返しますが、どちらもダイヤモンドの様なブリリアンスではありません。
人間が輝きをはっきりと強く知覚するには、明るい領域と暗い領域とが十分に分散されたコントラストが必要です。その結果多くの場合でコントラストが高く、光の反射がやや低いダイヤモンドのほうが、光の反射が高く、コントラストがほとんどないダイヤモンドよりも見栄えがよく輝いていると知覚します。当然ですが数値で光の反射だけで測定すれば前者の方が輝いていることに成ります。さらに、ダイヤモンドは正面視だけでなく斜めから見た目や、そもそも動きの中で、揺れているときや傾いているときにも「パフォーマンス」を発揮する必要があります(光のパフォーマンスの動的な側面)。コントラストと明るさの変化は、目に見える美しさ【輝き】の重要な部分であり、光のパフォーマンス評価の一部である必要があります。
また重要な事として知覚される光のパフォーマンスには好みに個人差が有ります。今回の観察実験中に、GIAは、フィッシュアイ、暗い中心部、暗いメインや広い範囲の抜け(暗闇)など、ダイヤモンドの外観の明らかに美しさを損なうと判断される複数のポイントについて幅広い合意を見つけましたが、何をもってその人個人個人にとってより美しいのか?【光のパフォーマンスが高いのか?】については意見の相違があります。ハート&アロー(ハート&キューピッド)などの特定のダイヤモンドの外観に焦点を当てるために、他の輝きの要素すべてを除外することは、結果的に個人的な好みの余地をほとんど残しません。もちろん、GIAは、第三者に提供される情報は、ダイヤモンドの1つの側面だけに焦点を当てるのではなく、複数の要素の複合であるべきで その点については徹底する必要があると感じています。
輝き測定器など他の多くのシステムで測定された光のパフォーマンスには、ダイヤモンドに関する包括的な情報を提供する他の重要な要素の影響が含まれていないことに注意してください。(測定するパフォーマンス数値以外は無視される傾向に有る)重量比(太いガードルなど)、耐久性(欠けのリスク)、職人の技(対称性と光沢の品質を含む)も非常に重要な基準であり、4Cグレードにおけるカットの評価でもそれらは無視することはできません。※そのためエクセレントよりも光ると数値上で結論されたダイヤモンドが存在してしまいます。
本題に戻ります。光のパフォーマンスは実際には何を意味しますか?ダイヤモンドは私たちが他の人に見せるために身につけるものなので、答えはダイヤモンドの視覚的な魅力に結び付けられるべきです。物理学は、特定の条件下で特定のダイヤモンドが別のダイヤモンドよりも多くの光を返す、または別のものより多くのファイヤーを持っている事を証明したがるかもしれませんが、人間の目視で測定器がはじき出した光のパフォーマンスの差異を見抜けますか?光のパフォーマンスとは、特定のダイヤモンドを評価し、値またはグレードを割り当てると主張するコンピューターモデリング、インスツルメンテーションまたはその他の方法で算出したとするならば、実際に目にするものにリンクされている必要が有ります。
そうした光のパフォーマンスに対する曖昧さを使用して商取引がなされるべきではないので、GIAは「ライトパフォーマンス」という用語の使用を避け続けています。
私たちの結論
ダイヤモンドの美しさは様々な光の要素、輝きや明るさ、色温度、モザイクのバランス、全方位からの形の良し悪し、数え上げればきりがない光の複合によって美しさは決まります。それは数値ではないのです。そこでは何が重要でしょうか?【原石の良し悪しと研磨者の腕前】は研磨済みのダイヤモンドを観察しても即座に判断できません、最も重要な基準、それは【パッと見】の美しさです。普遍美ともいうべき美しさは当たり前ですが数値化できません。”いい男”や”いい女”はその定義が画一的なモノではなく単純に”いい男”や”いい女”なのです。
意外に思われるかもしれませんが宝石は”美しい事”が第一の定義です。単純に美しい事はとっても重要な要素なのです。その為に私たちは数多くのダイヤモンドを見て検品してその美しさの判断を磨いています。重ねて原石の選定と研磨師の目利き、そして一つではなく複合する幾つもの光の項目を引き出すべく研磨しダイヤモンドの輝きを引き出していく事こそ数値化された偏った美しさに左右されない普遍美を備える方法なんだと確信しています。現在輝きを数値化して各付けしたい企業が多く 小売店もその意図に振り回されていますが、ダイヤモンドにとって美しいかどうか?は数値化できるものではなく複数の光や輝きの要素の丁度良いバランスなのです。私たちは普遍美を追い求めて日々ダイヤモンドと向き合っていますが、これからもその目を磨き、本当の美しさを追い求めていきます。