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マスターカッター(Master Cutter)

全てのダイヤモンドのファセットをひとりで仕上げる事が出来る職人

世界最高峰のダイヤモンドポリシャー・マスターカッター

マスターカッター(ポリシャー) Master Cutter (Porisher)ダイヤモンドカットや研磨の分野でたった一人でダイヤモンドファセット面全てを仕上げる事が出来る研磨職人の総称。産業革命以前の世界ではダイヤモンドに限らずさまざまな分野の製造工場の動力は脆弱でした。(電力が無かったため蒸気機関や風力や水力、場合によっては人力など)1860年代にアフリカのダイヤモンド鉱脈が発見されて本格稼働するまではダイヤモンドは産出量も微量だったため研磨やカットは一部の特殊な職人の仕事でした。中にはダイヤモンド加工が本職ではなかった職人も多くいたようです。

1900年代以前はダイヤモンド研磨は必ず一人のマスタ―カッターが行ていましたが、産業革命以降はダイヤモンド鉱脈が解明され産出量が伸び世界中で宝石需要が大きく成ると、伴って生産量が上がり一人の職人で作業できる範囲を大きく超えてくるようになりました。
またダイヤモンドは携帯性の高い資産であるために”その持ち逃げ”を防ぐためにも研磨の全部を作業者に教えることは無かったのです。
現在でもダイヤモンド業界には取り扱う原石のサイズに応じたカーストが有り、大きなサイズを身分の低い加工業者が行う事は在りません、小さいサイズになるとそれだけ取り扱う金額が低下するダイヤモンド業界の闇の部分かもしれません。
これは世界的な名声を得たダイヤモンド加工者はすべからく大きなサイズのダイヤモンドを加工している事からも明らかです。

1900年以降、ダイヤモンドの研磨作業に使用する動力が電機となり安定的に大きな力が供給されるようになるとダイヤモンド生産の作業は分業化されていきます。生産コスト面で高コストとなる「一人の職人が全てを行うスタイル」は下火となってしまいます。(現在も+10.8等の特別なサイズのダイヤモンドに限ってはマスタ―カッターが一人で手掛けるケースも多く続いています)
ダイヤモンド研磨は大量生産大量販売の波に乗って効率の良い研磨面毎の分業制が敷かれて行きます。これ以降大規模な研磨工場(カットハウス)が出現し多くのダイヤモンド研磨工を生み出しました。伴ってマスタ―カッターは減少していきます。現代ではダイヤモンドのファセット面を全て一人で研磨できる職人はとても稀な存在となったのです。

スカイフは15世紀にベルギーで開発されたダイヤモンド研磨専用の道具

ベルギーでは15世紀の昔には伝説の研磨師ルドヴィック・バン・ベルケム等がいました。現代の名工としてはアントワープブリリアントのフィリッペンス・ベルト氏、世界最大のダイヤモンド”ゴールデンジュビリー”や”ミレニアムスター”のガビ・トルコフスキー氏、AWDC所属のピーター・ボンベケ氏(Pieter Bombeke)等アントワープには特別に重要なダイヤモンド原石の研磨を任せる事の出来る職人マスタ―カッターが僅かだが残っているのです。

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