こんにちはBRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーです。今日はダイヤモンド原石を宝石ダイヤモンドへと加工する最初のステップ、カットのプランニングを少しご紹介します。ダイヤモンドは採掘された後、レーザー技術を使って内部をスキャニングして何処にどういう内包物があるのか？そして内部の成長線はどのように配置されているのか？を検査されます。
一見美しいダイヤモンド原石であっても中心部に大きな内包物や研磨で避けて通れない欠陥を持っている場合は複数の小さなサイズにカットしなければなりませんし、中心部がクリアであれば一つの大きな研磨済みダイヤモンドを取り出す事が出来るかもしれません。
内包物や成長線の位置はダイヤモンドを仕上げる時に非常に重要なポイントとなるのです。また、一見不揃いな原石であっても原石内部にとても美しく整った部分を持つ場合もあります。レーザースキャンではそれらすべての情報をデータで取得する事が出来るためにカット、研磨してどのように仕上げるか？が原石を傷つけることなく行う事が出来るのです。レーザースキャンが確立されるまではダイヤモンド原石の透明な部分から内部を覗き込んで内部の特徴を目視で観察、予想してカットプランを立てる必要があったのです。
上写真はレーザースキャンしたダイヤモンド原石の画像です。画面右側に有効な研磨パターンが無数に表示されます。プランニングデパートではこれら無数の研磨パターンシミュレーションから最適な形を選ぶ作業を行います。上写真では３つのダイヤモンドを一つの原石から取り出すプランが表示されています。
青いラインで描かれたダイヤモンドは重さ優先で１．６ｃｔグレード優先で１．１ｃｔ程度、概ね１．４ｃｔくらいに研磨するパターンが一番多く表示されています。最終的に内包物をどの程度残すのか？クラリティーグレードを下げてカラットを上げるのか？をダイヤモンド市場の需給をみて判断します。この場合には１ｃｔを切れば０．９ｃｔ等に仕上げるつもりならクラリティーグレードもVVSクラスも狙える原石という事の様です。
こうしてみると、原石に対してダイヤモンドの仕上がりでどれだけロスが出るのか？といういわゆる”歩留まり”と言う考え方は余り必要ないという事がご理解いただけると思います。逆に歩留まりの影響を受けるのはメインのダイヤモンドではない原石から取り出す小粒のダイヤモンドの方が影響を受けやすいのと言うのもわかると思います。
ダイヤモンドの仕上がりの形は市場に出した場合の価格の予想で決定します。大きさとグレードをその時の市場の需要と供給のバランスで判断するのです。１つの原石から取り出すダイヤモンドの総量がどの程度の価値として市場に受け入れられるか？を予想して判断するというとても重要な役割を果たしているのがプランニングデパートなのです。
そしてプランが決まるとレーザーソーイング機を使ってダイヤモンドを切断します。この画期的なテクノロジーはダイヤモンド業界に非常に大きな作業革命を起こしました。それまで経験を積んだ一握りの熟練の職人のみに許されていたダイヤモンドをグリーピング（へき開して割る）する作業は成長線の読み間違いや、内包物が割れる方向に及ぼす影響、またその時の力加減の強い弱いで結果が大きく変化する不確定要素の多く失敗の恐れのある作業領域でした。その為、歴史的なサイズのダイヤモンド原石が見つかった場合は多くの専門家がカットプランと検証提示し、その中で最も効率よく安全にダイヤモンドをグリーピング（割る＝カットする）出来るアイディアを採用し、それを実行できる職人に依頼する必要があったのです。
しかしレーザーソーイングが実用化されると、職人の手で行うグリーピングがレーザーに比べて不安定要素が大きくまた、一つの原石からメイン以外の残り生地から別のダイヤモンドを研磨する計画を立てていても、メインストーンを安全に取り出すために負荷がかかりすぎて予定通りにグリーピングできない事も多く、歩留まりの低下以前に、原石としての機会損失が多かった為、職人の作業から最新テクノロジーを駆使した機械作業へと変化したのです。
ダイヤモンド・カッターと言う職業はこれによりホトンと無くなってしまったのです。
現在はダイヤモンドを仕上げる職人の事をポリシャーと呼びます。研磨仕上げは職人の手先の感覚と研磨の経験値、そして何よりダイヤモンドから美しさを引き出すセンスが重要です。この領域だけは未だに職人の手作業で行われているのです。BRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーではこの研磨作業にフィリッペンス・ベルト氏を指名しています。
