カッティングプロポーション最高のダイヤモンドに現れるハートと矢模様は”ハート&キューピッド”と呼ばれます。天使の矢に居抜かれたハートのダイヤモンドがハート&キューピッドです。この模様は1993年に発見されます。ダイヤモンドの最高グレードエクセレントを人類史上初めて達成したフィリッペンス・ベルト氏の研磨チームは人類で初めてダイヤモンドを最高グレードに研磨したチームですが、その最高グレードに研磨したダイヤモンドにもハートと矢模様が浮かび上がるダイヤモンドとそうではないダイヤモンドが有る事を発見します。逆説的にどういう条件だとハートと矢が見えるのか?を研究して行った所、ガードルを挟んでアッパーガードルとアンダーガードルファセットが対象に研磨されていることがハート&キューピッドの出現最低条件であることを突き止めました。
※その他にも各ファセットの角度や位置など現在では細かくどうなると出現するのか?は解明されていますので、其のルールにしたがって精密な作業を必要とする仕上げなのです。
ダイヤモンドの研磨は1800年代後半、産地であったアフリカがアパルトヘイトなど奴隷制度を取っていた事等が原因で基本的に分業制を敷かれていました。ですのでダイヤモンドの研磨を行う奴隷たちは在る決められた面だけを専門に研磨作業を永遠と繰り返すような仕事に従順させられていたのです。
そんなことも有り、アッパーガードルとアンダーガードルファセットを研磨する職人奴隷は違う人物に行わせていたのです。これは単純にダイヤモンドの全面を磨けるようになると研磨したダイヤモンドを持ち逃げされる恐れもあったため、奴隷職人にすべての研磨のノウハウを教えなかったと個が大きな理由なのですが、そんな理由も有って、当時名うてのカッターはいても、ダイヤモンドを研磨する職人はあまりいませんでした。その為ダイヤモンドのファセットがガードルを挟んで対象になる様に磨こうとする職人がいなかったのです。しかし、マスターカッターであるフィリッペンス・ベルト氏はガードルを挟んだアッパーガードルとアンダーガードルファセットが対象である方がダイヤモンドの仕上がりの形としても美しいと判断して、ファセットラインを極力そろえて仕上げるようにしていったのです。
そしてそのラインをきちんとそろえた結果、ダイヤモンドをキューレットトップにしてハートの模様、フェイスアップで8本の矢模様が目視で確認できるようになったのです。これはダイヤモンドを見る素人のお客様にも一目瞭然に研磨の対称性が見て取れることからたちまち人気となります。そしてベルト氏達が技術指導して現在では多くのダイヤモンド研磨の現場でハートと矢の模様が見えるように仕上げるようになったのです。
CGL中央宝石研究所では単純にハート&キューピッドが見えるだけではそれと認定していません、heartと矢模様が一定に均一に研磨されているか?また、出現方向の一致や角度など様々な項目を厳しく確認してハート&キューピッドを認定しています。
現在もトリプルエクセレントのダイヤモンドの中にもハート&キューピッドの出るものと、出ないモノが有ります。この違いは何でしょうか?実はカットグレードが同じトリプルエクセレントなら光の利率は同じとなります。美しさは同じなのです。しかしダイヤモンドの研磨面の対称性はハート&キューピッドのダイヤモンドとそうでは無いダイヤモンドでは大きく違いが有ります。
うえ写真はフィリッペンス・ベルト氏によって仕上げられた完璧なハート&キューピッドパターンのダイヤモンドの投影写真です。ハート&キューピッドはその後の研究でカットグレード最高のエクセレントでなくても、パビリオン角度やクラウン角度、そして何よりファセットの一致を追求して研磨すればカットグレード・ベリーグッドでも出現する事が判っています。しかし、何を持って美しいとするか?目に見えない細部まできちんと仕上げるというこの作業は私たち日本人の美意識にも訴えかけてくることだと思います。その証拠に多くの花嫁がアローに居抜かれたハードのダイヤモンドを婚約の記念のダイヤモンドに選んでいるからです。
お二人の記念となって幸せな記憶を閉じ込めるダイヤモンドは研磨職人の腕前でハート&キューピッドに仕上げられた逸品をお選びに成ってはいかがでしょうか?