第1話 休日のカフェ、揺れる想い
春の陽気が感じられる三月初旬の午後。代官山の人気カフェのテラス席で、松本瑞樹と親友の茜が映えるパンケーキを前に談笑していた。店内には柔らかなピアノジャズが流れ、周囲のテーブルも女子たちの楽しげな会話で満ちている。
「それでさ、瑞樹。結局、大也とはどうなの?」
茜がストレートに切り込む。彼女の手元には、スマホを構えたままの状態のカフェラテ。瑞樹は、フォークを手にしながら、ため息混じりに返した。
「うーん……正直、最近ちょっと微妙かも」
「え、微妙って?この前も普通にデートしてたじゃん?」
「普通にね。でも、それがもう物足りないというか……。」
瑞樹は先週の出来事を思い出していた。大也と一緒に見に行った韓国映画——主人公が運命の相手にサプライズでプロポーズするシーンに感動した。けれど映画館を出たあと、大也の何気ない一言が引っかかった。
『映画みたいにうまくはいかないよな、現実は』
その言葉がなぜか心に引っかかった。彼はいつも行動力があるけれど、深く考えずに突っ走ることが多い。そこが頼もしいと感じる一方で、不安にさせることもある。
「ほら、この間もね……」
瑞樹は、先日のエピソードを話し始めた。
——二人でドライブに行ったときのこと。大也が急に『この道の方が早いかも!』とナビを無視して山道に入った。結局、道に迷い、時間がかかってしまった。
「ちゃんと考えずに突っ走るの、彼のいいところでもあるけど、最近はちょっと疲れちゃうんだよね」
瑞樹がそう呟くと、茜はスプーンをくるくる回しながら考え込んだ。
「でもさ、行動力のない男の子だと、瑞樹を引っ張っていけないんだけど……」
「確かに、それは困るかも……。」
「でしょ?たとえばさ、デートするたびに『どこ行く?』って決めるのも全部瑞樹がやることになったら、それはそれで面倒じゃない?」
「……それはそうかも。」
「ほら、優柔不断な人だと、結婚どころか付き合い続けるのも難しくなるし。大也は考えるより行動するタイプだから、結果的に瑞樹を楽しませようとしてるんじゃない?」
瑞樹は、フォークを持つ手を止めた。
「……うん、そうかもしれない。」
「だからさ、結局それが大也の魅力でもあるよね?」
その瞬間、瑞樹のスマホが鳴った。画面には『大也』の名前。
「……なんだろう」
開いてみると、メッセージが届いていた。
——『来月、温泉旅行に行かない?』
「旅行?」
瑞樹は一瞬戸惑った。年度末の忙しさを考えると、今じゃない方がいいと思い、つい『難しいかも』と返信しかける。
しかし、それを見た茜がすかさず止めた。
「待った、それプロポーズかもしれないよ!」
「え?」
「だって最近、大也、やたらとデパートとかウィンドウショッピングに付き合ってくれるって言ってなかった?」
「うん……確かに。でも、それが何?」
「いやさ、あの大也が自分からジュエリーショップの前で足を止めたり、アクセサリー売り場をうろうろしてるって、結構珍しくない?」
瑞樹は驚いたようにスマホを見つめる。
「……本当に?」
「うん、せっかく誘ってくれたんだから、行ってみなよ!」
茜の言葉に背中を押され、瑞樹は迷いながらも、結局『行けるよ』と返信を送った。
大也のサプライズプロポーズまで、あと30日——。
毎週土曜日の23:59更新「30日後に成功するサプライズプロポーズ」ブリッジ銀座がお送りする完全フィクションのオリジナルラブストーリーです。さてどうなる大也のサプライズプロポーズ!?第二話、さかのぼる事2週間、茜と大也はブリッジ銀座店のソファシートに座っているところからのスタートです。
登場人物:
大越大也(おおこしだいや)埼玉県大宮市出身の30歳、趣味はドライブと釣り、行動力が有り何事もまずはやってみるタイプ。
松本瑞樹(まつもとみずき)神奈川県出身29歳、高校時代は名門野球部のマネージャーだったお姫様キャラ。慎重派でよく考えてから行動するタイプ。
瑞樹の友人の茜(あかね)29歳、瑞樹とは高校時代からの地元の友人で気心が知れている。大也とも面識が有り、
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