「ふたつの箱に込めた想い」

その夜、彼は少し緊張していた。
 レストランの窓越しに街の灯りがきらめく。
 テーブルの上には、ベルベットの小箱がひとつ。
「誕生日おめでとう。」
そう言って彼が差し出した小さな箱。
 彼女が開けると、そこには一粒の輝き――
 ダイヤモンドのプチネックレスが静かに光っていた。
「きれい……こんなに素敵なもの、ありがとう。」
嬉しそうに笑い、ネックレスをそっと胸元にかける彼女。
 その笑顔を見ながら、彼は深く息を吸って立ち上がった。
「実は……もうひとつ、伝えたいことがあるんだ。」
彼はもう一つのベルベットの箱を取り出し、
 そっと彼女の前でひざまずく。
 開かれた箱の中には、選び抜かれた婚約指輪。
驚きに目を見開き、手で口元を押さえる彼女。
 ダイヤモンドのネックレスが、胸の上で微かに揺れている。
「君と、これからの人生を共に歩みたい。結婚してください。」
彼女は涙をこらえながら、小さくうなずく。
「はい。」
その返事とともに、ふたつの箱に込められた彼の想いが、
 ひとつの約束となって、彼女の心に永遠に刻まれた。
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