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銀座の結婚指輪BRIDGEのブログ

第29話:前日夜、誓いの前の静かな時間

雨上がりの夕方。
空にかかった虹が、まるで誰かの幸せを祝福するかのように弧を描いていた。

「おおっ、これが新居か~!」

玄関のドアを開けた瞬間、茜がぱっと笑顔を咲かせた。

「うわ、玄関からいい匂い!さすが瑞樹、入った瞬間にセンス感じる〜!」

「いや、匂いは大也が焚いたディフューザーのせいじゃない?」と瑞樹が照れ笑いを浮かべると、

「そうそう、俺が一応“新生活の香り”ってやつを調べた」と大也がどや顔で続ける。

「ほんと仲良し夫婦だなあ、まだ式も済んでないのに〜」と茜が嬉しそうに言いながら、リビングへ。

ナチュラルウッド調で統一された家具と、観葉植物。窓からは柔らかな夕陽が差し込んでいた。

ソファに腰を下ろし、テーブルに広げられたのは式次第の台本や、司会進行のメモ。

「じゃあ結婚式の進行最終確認ね。まず新郎新婦の入場タイミングと……乾杯のご発声が誰だったか……あ、大也くんの上司の部長さんね」

茜はスラスラと進行台本を読み上げる。そこに漂うのは、プロのような落ち着きと、友人としてのあたたかさだった。

30日後に成功するサプライズプロポーズ:第29話結婚前夜

「ねえ茜、改めてだけど、引き受けてくれてほんとにありがとう」

瑞樹がコーヒーカップを差し出しながら、真っ直ぐに感謝の言葉を伝えた。

「何言ってるの。あんたの晴れ舞台だよ?私がやらなきゃ誰がやるのって話よ!」

茜はそう言って笑った後、ふと真顔になった。

「でも……あんたたち、本当に変わったよね」

「変わった?」と大也が不思議そうに眉を上げる。

「うん。昔の大也くんって、どっちかっていうと“なんとかなるっしょ!”ってタイプだったじゃん?それが最近は、ちゃんと一つ一つ確認して、慎重に進めてる。なんか、頼れる男って感じで」

「……やっぱバレてた?」と大也が苦笑すると、茜はすかさず瑞樹の方を見た。

「そして瑞樹。昔は何でも“ちゃんと”しなきゃって感じだったけど、今はね、なんか、肩の力が抜けたっていうか。いい意味で“イケイケ”になってる」

「イケイケって(笑)」瑞樹が小さく吹き出した。

「でもそれって、大也くんが隣にいるからだと思うよ。安心して、前に進めるっていうか……“この人と一緒なら大丈夫”って思える存在なんだろうなって」

言葉の一つ一つが、じんわりと胸に染みていく。

ふと瑞樹は、茜の目を見て思った。
高校の時からずっとそばにいてくれた彼女は、ただの親友じゃない。
家族みたいで、お姉ちゃんみたいで――

「……ずっと、見ててくれたんだね、私のこと」

自然と、そんな言葉が口をついて出ていた。

茜はちょっと驚いたようにまばたきをしたあと、にっこり笑ってうなずいた。

「うん。だって、親友だもん。泣いたときも、笑ったときも、怒ったときも、瑞樹の全部、ちゃんと見てきたよ」

瑞樹は胸がいっぱいになって、思わず茜の手をぎゅっと握った。

そしてそのやりとりを、少し離れたソファから見守っていた大也も、静かに微笑んだ。

「……なんか、いいな。そういうの。ほんとに、いい関係だなって思う」

「でしょ?瑞樹はね、放っておくと一人で全部背負っちゃうタイプだからさ、これからもちゃんと支えてやってよ、大也くん」

「もちろん」

大也はまっすぐに頷いた。

それから三人は、式の進行や余興の最終確認を終えるまで、時々笑い合いながら、穏やかな夜を過ごした。

そして帰り際、茜がふと振り返って言った。

「この家、二人にすごく似合ってる。きっと、すごくいい未来が待ってると思うよ」

そう言って、玄関のドアを閉める直前に見せた笑顔は、どこか涙をこらえているようにも見えた。

瑞樹と大也は、静かに手をつなぎ、玄関先でしばらくその余韻に包まれていた。

――親友がくれた、何よりも温かい祝福のかたち。

それはふたりにとって、指輪や式の演出以上に、大切な記憶となって心に刻まれた。


「じゃ、明日。遅刻しないようにね!」

茜の元気な声がドアの外に消えると、瑞樹はふぅと一息ついた。家の中が静かになると、あっという間に緊張の波が押し寄せてくる。

今日一日、彼女はずっと茜と一緒だった。最後の司会の打ち合わせ、リハーサル、音楽のタイミング、スピーチの確認。二人で何度も何度も「本番」の流れをシミュレーションしてきた。

それでも――いや、それだからこそ――瑞樹の胸の奥には、言葉にできないほどの感情が積もっていた。

「信じられないな……あたし、明日、結婚するんだ」

独りごとのように呟きながら、瑞樹は棚の奥から高校時代のアルバムを取り出す。ページをめくるたび、懐かしい笑顔が並ぶ。焼けたグラウンド、野球部のユニフォーム、スコアブックを握りしめていた自分。

“あの頃は、将来のことなんて全然考えてなかったな……”

慎重で、周囲の期待に応えることが最優先だった少女時代。だけど今の自分はどうだろう。明日の式を思い浮かべただけで、ワクワクしている。そんな感情を素直に抱けるようになったのは――間違いなく、大也の存在があったからだ。

「うん。明日が、楽しみ」

アルバムを閉じると、瑞樹はそっと目を閉じた。夜の静けさが、まるで深い湖のように全身を包んでくれる。


瑞樹は、白い便箋に綴った手紙を両手で持ちながら、深呼吸を一つ。そして、そっと声に出して読み始めた。

「お父さん、お母さんへ。
小さいころは、お父さんが帰ってくるまで眠れないって泣いていた私。
お母さんが作ってくれたお弁当を、誰よりも早く食べ終わってたこと。
思い返すと、どれもこれも温かい記憶です。」

一文一文、丁寧に読み進めながらも、途中から声が震え始めた。

「私は、二人のような夫婦になれるでしょうか。
時々喧嘩もしたし、心配をかけることもたくさんあったけれど……
いつだって、私の味方でいてくれて、ありがとう。」

言葉が喉に詰まり、視界が涙で滲む。堪えようとしても、無理だった。

瑞樹は手紙を胸に抱きしめ、その場にぽつんと座り込んでしまった。

その様子を静かに見ていた大也が、キッチンからマグカップを片手に戻ってくる。

「……練習のつもりだったのに、本番より泣いてない?」

そう言って、瑞樹の隣に座り、そっと肩を抱いた。

「お父さんもお母さんも、きっと泣くよ。こんなの聞いたら。俺も危なかったし。」

瑞樹は涙のまま笑って、「ほんとにもう……」とつぶやきながら、大也の胸に額を預けた。

「大丈夫。明日は、ゆっくり話そう。泣いたっていいし、言葉が詰まっても、それも全部大切な気持ちだから。」

その言葉に、瑞樹はもう一度深く息を吸い込む。そして、涙で濡れた手紙を大切に折りたたんだ。


一方その頃、大也は新居のリビングで、一枚の便箋に向かっていた。

「……手紙なんて、ガラじゃないんだけどな」

そう言いつつも、ペンを握る手は真剣だった。

瑞樹に出会って、恋人になって、家族になる決意をして。あっという間のようで、でも思い返せばひとつひとつがちゃんと意味を持っていた。

「最初はただ、“いいな”って思ってただけだったんだよ。でも、気づいたら、君がいる毎日が当たり前になってた」

便箋の上に、飾らない言葉が一つひとつ落ちていく。

「慎重で、ちゃんとしてて、俺と全然違うなって思った。でも……そんな君が、時々俺より大胆なこと言ったりしてさ。そういうとこ、すごく好きだよ」

手紙の最後に、「これからもよろしく」とだけ書いて、大也はペンを置いた。

ふぅ、と長い息を吐き、天井を見上げる。

「明日、か」

不安がないと言えば嘘になる。ちゃんと笑えるか、泣かせてしまわないか。誓いの言葉を、噛まずに言えるだろうか。

だけど、それでも。

瑞樹と一緒なら、どんな未来でも大丈夫な気がする。


「明日が、楽しみだなぁ、それにしてもw」

・・・口元に笑みを浮かべて山本との打ち合わせを思い出した。

それは数日前、事前に同僚の山本に依頼していたスピーチや余興を受けてくれるか確認のために会社近くのカフェに集まっていた時の事だ。

「で、スピーチと余興、頼める?」

「うん。もちろんいいけど……せっかくだから、ちょっと一風変わったのにしようと思って。」

にやりと笑ったのは、大也の同期であり親友でもある山本だった。

「名付けて、“大也ってどんな人?クイズ大会”。」

「……は?」

「いやさ、同僚たちって大也の色んな面知ってるじゃん?それをクイズ形式で出題するの。正解したら披露宴で豪華景品付き!」

大也は苦笑しながらも、どこか嬉しそうにうなずいた。

「たとえば、これとかどう?」

山本がスマホのメモを見せてくる。


Q. 大也が入社1年目の時、やらかした失敗とは?

A. プレゼンでクライアント名を間違えて言った
B. 駅のトイレにスーツの上着を忘れて出社
C. 釣り好きが高じて、会社の名刺に「趣味:バス釣り」って勝手に書き足して上司に怒られた


「おい全部あるだろこれ!」

「だよねぇ〜(笑)俺もどれが正解か迷った!」

ふたりは腹を抱えて笑った。

山本はその後もどんどんネタを繰り出し、「どんなスーツの色が多い?」「昼休みに食べがちなのは何?」など、職場での“あるある”も盛り込まれていった。

「これなら、職場の人たちも参加しやすいし、瑞樹さんにもきっとウケると思うよ。」

「頼むわ山本。最高の余興にしよう。」

「おう!一世一代のステージ、任された!」

握手を交わす二人。結婚式という一大イベントに、笑いと涙のスパイスがまた一つ加えられた瞬間だった。


そんなことを思い返している間に時計の針が、日付をまたいでいく。

それぞれの想いを抱きながら、ふたりはゆっくりとまぶたを閉じた。

“次に目を開けた時には、人生が変わっている”

そんな期待と少しの緊張を抱きしめて、ふたりは静かに、眠りについた。

→最終話未来への扉


第1話「休日のカフェ、揺れる想い」

登場人物
大越大也(おおこしだいや):埼玉県大宮市出身の30歳、趣味はドライブと釣り、行動力が有り何事もまずはやってみるタイプ。先日多数の友人の助けを借りてプロポーズを成功させ新しい人生の岐路に立っている。
松本瑞樹(まつもとみずき):神奈川県出身29歳、高校時代は名門野球部のマネージャーだったお姫様キャラ。慎重派でよく考えてから行動するタイプ。先日大也からのプロポーズを受けて晴れて婚約者になった。
瑞樹の友人の茜(あかね):29歳、瑞樹とは高校時代からの地元の友人で気心が知れている。大也とも面識が有りる二人の応援団。
茜の友人古田あやか(ふるたあやか):茜の大学時代の友人、ブリッジ銀座のスタッフでJJA公認ジュエリーコーディネーター年間100組以上のサプライズプロポーズをプロデュースしている世話好きなキャリアウーマン。
山本健司(やまもとけんじ):大也の会社で同期の同僚、同期の中でいち早く結婚に踏み切った結婚に関する先輩。お相手は高校時代からの彼女。

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