皆さんこんにちは!BRIDGE銀座アントワープブリリアントギャラリーです。今日はBRIDGE銀座で大人気のプリンセスカットを使ったマリッジリングが遂に人気ランキング上位に食い込んできたことを祈念して少しプリンセスカットについてご案内しようと思います。
プリンセスカットの誕生は1979年とダイヤモンドのカット形状としては比較的新ため、アンティークジュエリーなどにプリンセスカットのダイヤモンドがセッティングされたものは見る事が出来ません。プリンセスカットは研磨仕上げに非常に高い技術が必要とされるために50年くらい歴史をさかのぼると加工は不可能となります。それだけ最新の技術で研磨しげされた新しい形状なのです。
開発したダイヤモンドクリエイターはイスラエル・イツコウィッツ、言わずと知れた現役最高のマスターカッターの一人です。彼はレール留めのダイヤモンドリングにおいてラウンドブリリアントカットを連続させた場合に石と石の間に僅かにできる隙間が無い方が美しいと感じていました。
当時全面ステップカットのエメラルドカットの様な四角いダイヤモンド形状は開発されていました。しかし、平面のダイヤモンドに対して曲線的な面(ファセット)を磨く技術は確立されていなかったのです。イツコウイッツはこの隙間を0に出来るような研磨のダイヤモンドで且つ、ラウンドブリリアントカットと同等の輝きを放つ形状のダイヤモンドを求めていたのです。
上写真がラウンドブリリアントカットのチャンネルセッティング(レール留め)です。確かにダイヤモンドとダイヤモンドとの間に隙間が空きます。これは仮に隣り合うダイヤモンド同士を干渉し合うくらい接近させても解消されません。どうしても隙間が空いてしまうのです。
この問題を解決する方法は簡単です。四角いダイヤモンドをセットすればいい訳です。しかし、当時90度の直線的な研磨角度のダイヤモンドに放射状の研磨面を付けることは物理的に出来ませんでした。ダイヤモンドの加工技術がそれを可能にしていませんでした。超硬素材であるダイヤモンドゆえの問題点でもありました。
この時からイツコウイッツのダイヤモンド開発が始まります。手始めにイツコウィッツは彼の叔父でダイヤモンドカットの師匠でもあったマスターカッター”イガル・パールマン”(Ygal Perlman)とラディアントカットの開発者ヘンリー・グロスバードの協力を得て、光学的なあらゆる輝きの可能性を試しました。何ヶ月にも及ぶ光学的研究とさまざまな切断方法を用いた数え切れないほどの実験の後、イツコウィッツとパールマンは見事に真っ直ぐな角を持つ新しい正方形のカッティングプラン思い付きます。そして出来上がったカットをクァドリリオンカットと名付けました。※この時クァドリリオンカットの開発チームにはヘンリー・グロスバードの他にも複数の著名なマスターカッターも参加していました。
完成したクァドリリオンカット(Quadrillion Cut)。このカットはダイヤモンドクリエイターでマスターカッターのイスラエル・イツコウィッツ氏らの開発チームで発表されます。クァドリリオンカットは49ファセットでシンプルに仕上げられた四角いダイヤモンドとして注目を集めます。
イツコウィッツは90%の角が隙間を残さずに石を隣同士に並べることを可能にし、チャンネルセッティングにおいて切れ目のない輝きの新しい外観を生み出すことに成功したのです。イツコウィッツはこのカットを使って様々なデザインを生み出していきます。彼の生み出したものの中で特にインビジブルセッティング(ミステリーセッティング)は世界的にも有名な発明と言えます。実はこのクァドリリオンカットの誕生こそ現在のプリンセスカット”その物”なのです。
上写真は全てエクセレントプロポーションに仕上げられたプリンセスカットのチャンネルセッティング
クァドリリオンカットのアイディアは瞬く間に世界中のダイヤモンドカッターに受け入れられました。しかし同時にパテントは脆弱で模倣品も多く出回ってしまいます。イツコウイッツ氏は元々クァドリリオンカット(プリンセスカット)をメレー使用で開発した為に面数は49面と少なめの設定にしていました。この後イツコウイッツ氏はデビアスのダイヤモンドアワード受賞を皮切りにインビジブルセッティングを開発するなどダイヤモンドデザインの第一人者へと昇り詰めていきます。
メレ用に開発されたクァドリリオンカットでしたが、一粒用に使用しようとするジュエリーメーカーも多くあらわれます。魅力的な四角のブリリアントですので当たり前の事なのですが、少しカット形状を変化させればクァドリリオンカットとは別のカット形状として出荷すると個が可能でした。その際に少しカット形状を変化させたクァドリリオンカットを市場は【プリンセスカット】と呼び始めます。現在も”自称プリンセスカットのダイヤモンド”を鑑定鑑別機関で鑑定させるとカット形状には”モディファイテッド・スクェアー・ブリリアント(Square Modified Brilliant)”【改良された四角いブリリアントカット】という表記となります。これはイツコウイッツ氏が手掛けたクァドリリオンカットをちょっと変更した亜型カットで分類のないカット形状なのです。このようなプリンセスカットと自称しているダイヤモンドには40面程度~90面程度迄様々な形状がある様です。
そして2018年ダイヤモンドのエキスパートであるデビアスグループが遂にプリンセスカットのガイドラインを発表し、様々な自称プリンセスカットの歴史に終止符を打ちました。同時にプリンセスカットにかとグレードを導入し、それ迄ラウンドブリリアントカットにしか採用されていなかったカットグレードを制定したのです。新たに完成したプリンセスカットの設計図。しかしラウンドブリリアント同様にプリンセスカットも最高グレードのカットを達成するのは容易では在りません。一体誰がこの難しいカット形状の最高グレードを研磨仕上げ仕切る事が出来るのか?その時指名されたダイヤモンド研磨者がアントワープブリリアントの専属ポリシャー”フィリッペンス・ベルト氏”だったのです。
こうして2018年末フィリッペンス・ベルト氏の手でプリンセスカットの最高グレードが誕生したのです。