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ダイヤモンドカット歴史と技術

ダイヤモンドはカットにより多彩な表情を見せてくれます。

同じダイヤモンドの原石でも、カット次第で「輝き」や「価値」が大きく変わります。

ご覧のページでは、ダイヤモンドカット発展の歴史・技術をふまえ、当店BRIDGE銀座が指名する世界的ダイヤモンド研磨師「フィリッペンス・ベルトにつきましても掲載いたしました。
より一層、ダイヤモンドに興味を持ってもらえれば幸いです。

ダイヤモンド加工の歴史は、超硬素材であり脆(もろ)い特異な性質のダイヤモンドの魅力を最大に引き出すため、ダイヤモンドカッター(研磨師)の発想や感性、創意工夫をもって問題に挑む歴史でもありました。
今、私たちが手にするダイヤモンドは、そのような長い歴史を経て最高の輝きで魅了してくれます。

BRIDGE銀座 Diamond

ダイヤモンドカットの予備知識

ダイヤモンドは地球上で実験で確かめられている中では天然で最も硬い物質です。 そんな硬いダイヤモンドでも、結合力の比較的弱い面があり、その性質を「劈開(へきかい)」と言います。

その「劈開(へきかい)」を使ったカット方法を「クリービング」と呼びます。

また、ダイヤモンドの切断や研磨において、結晶構造上無視する事が出来ない切断可能方向を「グレイン」と呼びます。

ダイヤモンドは原石の形に関わらず、石の内部で、最も柔らかい六面体面と、次に柔らかい十二体面とが有り、この面に沿ってダイヤモンドパウダーを使い切断する事ができ、これをソーイングと呼びます。

一般的にダイヤモンドの輝きはブリリアンスディスパージョンシンチレーションの3要素で構成されています。

簡単に言いますと、

  • ブリリアンス=全体の輝き
  • ディスパージョンは光の分散
  • シンチレーションは鏡面反射

この3要素のバランスがダイヤモンドの輝きを決めています。この他にBRIDGEでは以上機3要素が揃ったダイヤモンドにみられる”ファイヤー”も特に注目しております。

ダイヤモンドはカット(Cut)して成形しその後研磨(Polish)して仕上げる大きく分けて2工程で行われ、現在はそれぞれ別の職人が担当しています。

ダイヤモンドカットの種類と歴史

ダイヤモンド ポイントカット

14世紀初めはダイヤモンドの特性がまだまだ謎に包まれていたので、「劈開(へきかい)」に対して、グリービングを使って原石をカットし形を整えた後に表面を仕上げたポイントカットが最新でした。

この時代まで地上で最も硬い鉱物であるダイヤモンドを磨く方法は長らく謎でした、そのためダイヤモンドは劈開を使って割ることはできても磨くことは出来ませんでした。

そのため使用用途としてはジュエリーではなく主に石板や硬い素材に文字を書く道具として利用されていたようです。しかし遂にこの時代ダイヤモンドの結晶同士を擦り合わせると磨ける事が解明され、ダイヤモンドの表面を磨いて仕上げる事が出来る様になりました。

それは木の板や革を固定して、ダイヤモンドの粉末をオリーブ油に溶いてペースト状にして塗り込み、ダイヤモンドの方を手に持って擦っていくという原始的な研磨方法でした。人力での研磨は途方もない作業時間を要したと推測されます。

しかし表面を仕上げる事が出来る様に成った事でダイヤモンドの高硬度から発揮される表面光沢や高い光の屈折から美しい輝きが生まれる有る事が判り宝石としての魅力に注目が集まります。

 

ダイヤモンド テーブルカット

15世紀中期になると、ポイントカットの上下を切断した形のテーブルカットが登場します。

ソーイングの技術を使って六面体面十二体面を見極めてカットしていきます。

ダイヤモンドの粉末をオリーブ油に溶いてペースト状にした研磨剤をソーイング・マシーン(切断機)を使って切断していました(動力源は人力や水車や牛などの家畜)。

円盤状のソーイング・ブレードに、ペースト状の研磨剤を塗布し固定したダイヤモンドを押し当てると少しずつ研磨できます。この際研磨する石自体から出るダイヤモンドの粉末がソーイング・ブレード(切断機)に絶えず装着される仕組み。

ソーイング・ブレード(上写真)やスカイフ(下写真)等、現在もダイヤモンド研磨の現場で使われる専用の研磨機や、ダイヤモンド研磨専用の器具が開発されたのもこの頃で、ブルゴーニュ公国のシャルル突進公に仕えたダイヤモンド研磨師、ルドウィック・ヴァン・ベルケム(Lodewyk van Berken)らの活躍によりダイヤモンドの研磨技術は飛躍的に進化していきます。

ダイヤモンドのソーイング・ブレード
ダイヤモンド研磨専用の器具

15世紀中ごろはソーイング・ブレードの動力源は人力や水車や牛に引かせたりなど、さらにはスカイフの登場でこの時初めてダイヤモンドに直線的で平らな面を研磨出来る様に成ります。

ダイヤモンドの研磨1
交換用の鋼鉄製のスカイフ フィリッペンス・ベルト
ダイヤモンドに直線的で平らな面を研磨

交換用の鋼鉄製のスカイフを持つのは現代の巨匠フィリッペンス・ベルト氏(写真中)。

ダイヤモンドに面を付けたローズカット

16世紀になると、センターソーイングで中心から二つに分けたダイヤモンドに面を付けたローズカット(薔薇のつぼみに似ているドーム型のダイヤモンドをローズカットと呼びます。)などのより複雑なカットが登場します。ダイヤモンドのシンチレーション(鏡面反射)を楽しむこのカットはこの後、ダイヤモンドのグレインや石の内部で最も柔らかい六面体面と次に柔らかい十二体面とがある事などが、一部の腕利きの職人の間で研究され明らかになり、12面、16面、24面、32面とより複雑なカットが登場します。

当時は、ロウソクの明かりの元で幻想的に輝くことが求められたため、最先端技術を駆使して作られたローズカットなどの曲線面にモザイク模様のような、「面」をつけたカットが注目の的となり、社交界や貴族の間で大人気となります。

ダイヤモンド・オールドシングルカット

その後17世紀まで、ダイヤモンドの研磨やカットは器具の進化と共に複雑さを増し、次第に中心から放射線状に多数の研磨面が対称的に刻めるようになってきて、いよいよ現在のダイヤモンドの形に近づいてゆきます。

テーブルカットの稜線を研磨して、クラウン部分にテーブルとベゼル・ファセットを8面、パビリオンにキューレットとパビリオン・ファセットを8面つけたオールドシングルカットが登場しました。

ダイヤモンド・マザラン・カット

17世紀後半には、マザラン・カットが登場しました。
ほどなくダイヤモンド内部に入射した光が、パビリオン部分で反射してクラウンから出る事になるダイヤモンドのブリリアンス(全体の輝き)に注目が集まり、どの様にしてブリリアンスを引き出すかがカットのテーマに成って行きます。

また、変五角形のプリズムが発見されたのもこの頃で、同時にディスパージョンの研究も進みます。
このマザラン・カットは、最初のブリリアントカットと呼ばれ、ダイヤモンドの持つ高い光の屈折率によって生み出される虹色の輝きや、物質上最高硬度であることから生まれる平滑度の高い研磨面から、跳ね返る強い光に注目が集まり研究が進みました。

ダイヤモンド・オールドマインカット

17世紀末には、オールドマインカット(トリプルカットとも呼ばれる)が登場します。

このカットは、ブルーティングという新しい技術を駆使して正面から見たダイヤモンドの輪郭を丸く仕上げていて、現在のブリリアントカットの原型になっていると言われています。この時初めてダイヤモンドカット・デザインに曲面・曲線が加わります。

最初は、原石を旋盤状のダイヤモンドを固定する器具(ドープ)にセットし、もう一つの研磨用ダイヤモンドを、セットした工具に押し当てて高速で回転させ、テーブルを正面に見たダイヤモンドの外周を丸く曲線状に仕上げていました。ダイヤモンドのガードル部分を仕上げると言う意味で、ガードリングとも言われます。

当時は、人力ペダルが動力源でしたので気の遠くなるような作業だったと思われます。

現在のブルーティングマシーン
ブルーティング

現在のブルーティングマシーン、最新のダイヤモンドの研磨ではガードルを決めることでベースサイズを決めて、ベースサイズを元にテーブル径を決めてソーイングしていく流れなので、このブルーティングはダイヤモンドカットにおいて最初に施される加工なのです。

ダイヤモンド・オールドヨーロピアンカット

18世紀初めには、オールドマインカットを進化させたオールドヨーロピアンカットが登場します。
ブルーティング技術が向上し、テーブルを正面に丸い形状に仕上げる事が出来る様になります。
58面体に研磨されたこのカットは現在のラウンドブリリアントカットのルーツと呼ばれています。

ダイヤモンド・ラウンドブリリアントカット

そして20世紀(1919年)に入り、光学理論と数学によってダイヤモンドの理想的な形がマルセル・トルコフスキー(Marcel Tolkowsky)の著書「ダイヤモンドデザイン」の中で発表されます。

マルセル・トルコフスキーの考案したダイヤモンド設計図は、

1.カットされたダイヤモンドのクラウン部分から石内部に入射した光をパビリオン面で2度にわたり全反射させ、ほぼ100%クラウン部分に戻すためのパビリオンメインファセットガードル平面の作る角度

2.クラウン・ファセットから分散によってできるだけ多くの虹色が現れるようなベゼル・ファセットとガードル平面の作る角度

3.主にテーブルから出射するブリリアンスと呼ばれる白色光の輝きと、ディスパージョン(光の分散)。またはファイアと呼ばれるスペクトル・カラーのバランス、以上の三点を総合的に考えて、ガードル直径の53%をテーブルパーセントとするデザイン案が、ダイヤモンドから最高の美しさを引き出すカットであるとし、これ以降さまざまなダイヤモンド研磨師たちが試行錯誤を繰り返し最高の輝きを追い求めるようになりました。

しかし当時、このカットはそれ以前のダイヤモンドに比べて大幅な歩留まり低下を伴う形だった事と、結晶学的に無視できないグレインを持っていたため、実現が難しくスタンダード化には少し時間を要しました。

※現在のラウンドブリリアントカットも八面体の原石から50%以上が失われてしまいます。

同時に、世界では「産業革命」と呼ばれる資本主義確立期の大変革が起こり、それまで手動や水車や牛などの動力源が、蒸気機関や電気等が使われるようになり、ダイヤモンドの世界にもそれぞれの工程を分業や協業をおこない、多くの人員を集めてより効率的に生産を行うマニュファクチャと呼ばれる研磨工場が多数出現しました。

一人のマスターカッターを中心に、多くの工夫が各作業工程を担当する現在の形の基礎となりました。サイトホルダーの誕生もこの頃です。

ダイヤモンド・カッターズブランドと呼ばれる企業が登場するのも産業革命期のこの時代です。それまでは分業していなかったダイヤモンド研磨を流れ作業に変えて企業化しダイヤモンドジュエリーの普及に尽力した偉人たちです。ほとんどのマニュファクチャーが約100年前のベルギーで発祥しオランダやアメリカを拠点に活躍しました。

またこの頃から、ダイヤモンドはロウソクではなくシャンデリア等の電気の明かりの元でより輝くことが求められて行きます。

ダイヤモンド・エクセレントカット

1990年にエクセレントカット、1993年にハートアンドキューピッドが登場します。

マルセル・トルコフスキー(Marcel Tolkowsky)の「ダイヤモンドデザイン」で発表されたデザイン案から実に69年後の1988年、ダイヤモンドのグレードなどの基準を決める教育機関G.I.A.(Gemological Institute of America)により、ついにダイヤモンドのカットグレードエクセレントの基準案が発表されます。

当時日本では、AGL(一般社団法人 宝石鑑別団体協議会)により先行してダイヤモンドのカットグレードが施行されていましたが、世界的なダイヤモンドのグレードを定めていたG.I.A.基準ではカットグレード自体の採用が無く、AGL国内鑑定は4C、G.I.A.国際鑑定は3Cというダブルスタンダードの状態になっていました。

それは、マルセル・トルコフスキーの「ダイヤモンドデザイン」で発表されたデザイン案を含め、それまで発表された最も美しいと評された数々のダイヤモンドは理論上の最高では無かった事や、その中で美しさの優劣を決める事が来なかったという理由からでした。

そのため、市場には自称最高の輝きのダイヤモンドが多く出回り、小売業者や卸売業者はもちろん、消費者にとっても判断の難しい状況が続いていました。

そこでG.I.A.では、1988年カットグレード・エクセレントを、ダイヤモンドの光学的な美しさのバランスにおいての最高品位としてランク付けし、カットグレードを決定、制定していきました。G.I.A.のカットグレードはエクセレント、ベリーグット、グット、フェア、プアの5段階で評価される仕組みです。

これにより、先行していた日本国内のダイヤモンド・カットグレードもそれに倣(なら)う形となり、現在はG.I.A.基準で国内も統一されAGL基準は廃止されてしまいました。

G.I.A.のエクセレントカット発表により、最高グレードの定義が決定されダイヤモンドのカットと研磨の歴史と変遷は一応の終着となったのです。

現在、ダイヤモンドを価格決定する際に基準として用いられることの多いラパポートレポート上では、同グレードの3EX(トリプルエクセレント)とEX(エクセレント)では5%取引価格に差異が有ります。これは実際にトリプルエクセレントのダイヤモンドの価値がそれ以外よりも高いことを意味します。

フィリッペンス・ベルト
フィリッペンス・ベルト

1988年以降、サイトホルダーやダイヤモンドのマニュファクチャ研磨工場は、競ってG.I.A.の発表したエクセレントグレードの開発競争に突入します。

そして1990年!
ベルギー・アントワープのダイヤモンド研磨師フィリッペンス・ベルト(philippens herbert)率いるダイヤモンド研磨のTOPチームの手によって初めて達成されます。

当時、レーザー光線の研究上重要な発見があり、高強度レーザーの発振が可能になります。

それまでは研磨不能だった結晶学上無視できなかったグレインを無視して、ダイヤモンドを思う方向に焼き切る事が出来る「レーザーソーイング」という新しい技術が導入されたことも、エクセレントカット達成の大きなきっかけとなりました。

90年代そうした最先端技術と他に独自のノウハウを必要とするダイヤモンド研磨の現場ではエクセレントカットの研磨が極端に難しく成功できる職人が依然少ない現状が続きます。そんな中次々とエクセレントカット研磨に成功したベルト氏は、その後世界各国で技術指導をし研磨の技術を広め、エクセレントカットのスタンダード化に貢献していきます。

また、エクセレントカットのダイヤモンドを多く仕上げる中で、不思議な模様ハートアンドキューピッドが浮かび上がることが分かってきました。

当初、別の名前でプロモーションされていましたが、商標の問題で現在はハートアンドキューピッドと呼ばれとても高い人気を誇ります。
フィリッペンス・ベルトは、その発見から開発にも携わります。

銀座のダイヤモンド

エクセレントカット達成の3年後、1993年にはハートアンドキューピッドパターンを完成させました。

  • ラウンド円には終わりがないと同様に愛にも終わりがない
  • ハートマークが秘められている
  • 愛を内蔵している
  • 愛の使者キューピッドによって射止められたハート

など、愛の逸話をいくつも持つハートアンドキューピッドパターンですが、ダイヤモンドのカットグレードの内シンメトリー(対称性)が特に優れていれば、G.I.A.カットグレードがエクセレント以下のベリーグットでも、クラウンとパビリオンのファセットの先端が一致している事や、複数存在する同種のファセットの形が合同一致している状況であれば実はハートアンドキューピッドパターンは出現することが分かっています。

研磨の各ファセットの角度調整や先端の一致など細部の細かな調整が重要な要素であるハート&キューピッドパターンを狙って出す事こそ高い研磨技術が要求さる職人の世界と言えるのかもしれません。

ハートアンドキューピッドパターン1
ハートアンドキューピッドパターン2

2007年、G.I.A.によるカットグレードがついに導入されラウンドブリリアントカットのダイヤモンドにおいて最高位のカットはトリプルエクセレントとなりました。

トリプルとは、カットの総合評価ポリッシュ(表面の研磨状態)研磨済みダイヤモンドの対称性の3項目の評価が全て最高のエクセレントの場合、そのダイヤモンドをトリプルエクセレントカットと呼びます。

冒頭にも述べましたが、ダイヤモンドの輝きは、ブリリアンス、ディスパージョン、シンチレーションの3要素で構成されています。簡単に言うとブリリアンスは全体の輝き、ディスパージョンは光の分散、シンチレーションは鏡面反射、この3要素のバランスがダイヤモンドの輝きを決めていて、そのうちどのバランスをもって最高品位とするかをG.I.A.が定めたことでダイヤモンドのカット歴史との変遷はここに一応の結末を見る事となりました。BRIDGEではブリリアンス、ディスパージョン、シンチレーションのバランスが最高に整ったダイヤモンドにみられるファイヤーも重要視してダイヤモンドを厳選しカット研磨しています。

エクセレントカット、ハート&キューピッドをその手で生み出した巨匠フィリッペンス・ベルトによって仕上げられるダイヤモンドの輝きをぜひ店頭で確かめてください。

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